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2019/01/01

<オピニオン>アナリストの眼                                                             アジア経済文化研究所 笠井 信幸 理事

  • アジア経済文化研究所 笠井 信幸 理事

    かさい・のぶゆき 1948年、神奈川県横浜生まれ。国際開発センター研究員、ソウル大学経済研究所客員教授、秀明大学教授。アジア経済文化研究所筆頭理事・首席研究員、育秀国際語学院学院長。

◆消費低迷、輸出の成長牽引力低下◆

 2018年は朝鮮半島の地政学的リスクが低下し、韓国の国際環境が昨年と比べて良好な形で醸成された。18年4月27日に開催された南北会談における「板門店宣言」、それを受けた形で開催された同年6月12日シンガポールで行われた米朝首脳会談で、それまで繰り返されていた北朝鮮の核実験、ミサイル実験が停止された。平和へ向かう環境が整備されるに伴い、韓国の景気回復に弾みがつく環境が醸成された。

 韓国銀行は、18年10月の『経済展望報告書』において19年の経済成長率を2・7%と予測し、KDI(韓国開発研究院)も「KDI経済展望」で2・6%の予測を発表した。他の研究機関も2%台の予測を出している。これらの予測は景気回復への予測とはほど遠いものである。背景には、これまで唯一景気を主導してきた輸出環境の悪化で韓国経済も鈍化するという予測である。輸出実績を見ると、18年第1四半期、金額基準で9・9%(物量基準5・8%)、以下、第2四半期3・1%(同9・7%)、第3四半期1・7%(同5・6%)で、金額基準では輸出鈍化が明白である。物量基準では成長力を維持しているが、それでも輸出モノカルチャーとなっている半導体の単価下落が物量輸出にも下落の影を落としてきたことを示している。そのほか主力商品である自動車及び部品、石油製品、鉄鋼製品も下向いており、19年前半は輸出の成長牽引力低下は引き続くであろう。


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