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2019/01/25

<オピニオン>韓国経済講座 第213回                                                        アジア経済文化研究所 笠井 信幸 筆頭理事

  • アジア経済文化研究所 笠井 信幸 筆頭理事

    かさい・のぶゆき 1948年、神奈川県横浜生まれ。国際開発センター研究員、ソウル大学経済研究所客員教授、秀明大学教授。アジア経済文化研究所筆頭理事・首席研究員、育秀国際語学院学院長。

  • 韓国経済講座 第213回

◆韓国の物価は高いのか?◆

 日本より韓国のほうがモノの値段が高い。2008年のリーマンショック以降、韓国の物価は急増し10年にはGDPデフレーターが100を超し物価が上昇するインフレ状態になった。15年を100とする消費者物価指数も08年の86から91に上昇した。この時期韓国の物価が上昇したことにより日本の物価の相対的高さが感じられなくなった。

 英経済誌調査部門エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)の世界生活費ランキングによると、米ニューヨークを100とする指数で、18年版で最も生活費が高い都市はシンガポールで、指数は116で、ここ何年か1位が続いている。2位は仏パリで、以下チューリヒ、香港、オスロと続き、6位にジュネーブとともにソウル(106)がランクされる。ちなみに東京は11位に位置している。つまり、為替レートのバイアスはあるものの韓国の生活費は日本より高いことがこのランキングでは示している。

 さて、日韓の物価を関連データで確認してみよう。周知のように、物価の基礎データはGDPデフレーターと消費者物価指数で示される。GDPデフレーターは名目GDP÷実質GDP×100で算出され、名目GDPと実質GDPはそれぞれ物価変動の影響を考慮せずに算出したGDPとそれを無くしたGDPで、その比に当たるGDPデフレーターは、物価変動の程度を表す物価指数である。そのため、GDPデフレーターが100より大きい場合であれば物の値段、物価が上がっている事を意味し(インフレーション)、100より小さい場合であれば物の値段、物価が下がっていることを意味(デフレーション)する。そして、GDPデフレーターに含まれるのは国内の企業の利益や労働者の賃金などの所得の変化、設備投資、材料・部品などの企業間取引や公共投資などの政府取引など幅広い分野の物価変動を反映している。つまり消費者が購入しないような工作機械・外国向けの販売品の価格が含まれるのだ。改めてGDPとは「一定期間において、一国内で生産されるすべての最終的な財・サービスの市場価値」である。

 一方、消費者物価指数(CPI)は消費者の生活向けの財サービス全般、輸入材、原油などの輸入原材料価格も含まれそれらの影響を大きく受ける指数である。つまり、GDPデフレーターは国内で生産されるすべての財・サービスの価格を反映するが、消費者物価指数は消費者によってのみ消費された財・サービスの価格を反映するという違いがあるのだ。

 なお、インフレ率は以下の算式から求められる。n期のインフレ率=((n期の消費者物価指数)-(n―1期の消費者物価指数))/(n―1期の消費者物価指数)×100(%)。以上の指数を日韓の2000年以降プロットしたのが掲げたグラフである(上図)。

 GDPデフレーターと消費者物価指数の推移は、韓国がほぼ同水準の一定の幅をもって上昇している。08年のリーマンショック以降インフレ率が急上昇し、GDPデフレーターも07年以降物価上昇が続いている。消費者物価指数も下方を同じ推移を辿っており、生活物価が上昇している。GDPデフレーターが消費者物価指数を上回っていることは、


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