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2019/05/31

<オピニオン>韓国経済講座 第217回                                                        アジア経済文化研究所 笠井 信幸 筆頭理事

  • アジア経済文化研究所 笠井 信幸 筆頭理事

    かさい・のぶゆき 1948年、神奈川県横浜生まれ。国際開発センター研究員、ソウル大学経済研究所客員教授、秀明大学教授。アジア経済文化研究所筆頭理事・首席研究員、育秀国際語学院学院長。

  • 韓国経済講座 第217回

◆多くの指標が一つの方向へ◆

 文在寅政権が、この5月で就任2周年目を終え、KBS(韓国放送公社)の対談番組に出演し「去年1人当たり国民所得が3万㌦を突破して強国の象徴である30―50クラブ(1人当たり国民所得3万㌦、人口5000万人以上)に世界七番目で公式加入し、経済成長率も主要先進国に比べて良好な水準を維持した」とこの間を振り返ったという。経済政策の主柱である所得主導成長政策も維持する姿勢を示しており、今後もこの政策の基調は変わりそうにない。

 インタビューの評価はさておき、この間の経済実態は大統領の認識とかなり異なることが報じられている。これらに触れる前に、この間の主要指標を確認しよう。掲げた表は、文政権がスタートする直前の2017年第1四半期の各指標の対前年増減率と政権3年目の直前の19年の第1四半期の増減率を比較している。17年度のこの時期は3月31日未明、朴槿惠前大統領が逮捕され、それまで大統領弾劾訴追問題で国中が混乱していた時期の指標である。こうした悪条件の中で16年第1四半期実績に対する増減率である。輸出は17%台で伸び、設備投資や産業生産も4%台で増えており、それが1%のGDP成長をもたらしていた。これが文政権就任直前の主要指標であり、その後2年間が経過した。
 
 その間保守政権によって混乱した国政を転換すべく新政権の立場から政策を進めてきた。経済政策基調は、成長路線から分配・所得主導路線へと舵を切ってきたのがこの2年間である。一瞥して分かるように、その成果はまだ出ていない。というより政権開始以前より悪化したのではないかという厳しい意見もあるほど、この間の国民経済は様々な指標が一つの方向に向いてしまった。19年第1四半期は対前年同期比で全ての指標が落ち込んで、韓国の成長項目の輸出、設備投資に至ってはここ何年か経験したことのない落ち込みを見せている。

 話を元に戻そう。この2年間の経済実態の変化は以上の通りであるが、この国民経済下方分解をもたらした政策的要因は、多くの識者が指摘するように所得主導主義と呼ばれる政策に起因する。こうした論法の下で、最低賃金引き上げや企業所得税の引き上げなどが行われたのがこの間の対策であった。そうした効果・影響は短期間に見られるものとそうでないものがあり、大統領の冒頭のインタビューは、改善効果が表れるのは今年度後半期以降であり、その前でもいくつかの指標は改善されたという見解である。

 韓国銀行が19年4月25日に発表した第1四半期のGDP成長率は0・3%減であった。GDPは消費+投資+政府支出+純輸出(輸出―輸入)で構成されており、


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