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2021/07/02

<オピニオン>曲がり角の韓国経済 第67回  なぜ韓国で「女性徴兵論」が浮上したのか                                                       ニッセイ基礎研究所 金 明中 主任研究員

  • 曲がり角の韓国経済 第67回  なぜ韓国で「女性徴兵論」が浮上したのか                                                        ニッセイ基礎研究所 金 明中 主任研究員

    キム・ミョンジュン 1970年韓国仁川生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了(博士、商学)。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年からニッセイ基礎研究所。日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員、日本女子大学、横浜市立大学、専修大学非常勤講師を兼任。専門分野は労働経済学、社会保障論、韓日社会政策比較分析

◆ジェンダー間の葛藤解決が急務◆

 最近韓国では「女性徴兵論」に対する議論が白熱している。今年の4月19日に青瓦台(大統領府)のホームページには「男性だけでなく、女性も兵役に就くべき」と訴える国民請願が掲示され、29万人以上が賛同した。青瓦台のホームページに投稿された請願の賛同者数が20万人を超えると、青瓦台は公式的な立場を表明する必要がある。そこで、青瓦台は6月18日、「女性徴兵制導入の検討要求」に関連する請願について、「女性徴兵制は兵力の補充に限った問題ではなく、様々な争点を含んでおり、国民の共感と社会的合意など十分な議論を経て慎重に決定すべき事案です。また、女性徴兵制が実際に導入されるためには軍の服務環境、男女平等な軍組織文化への改善などに関する総合的な研究と事前準備が十分に行われなければなりません」と立場を示した。

 韓国には現在約60万人の軍人がおり、軍人の大部分は徴兵制に依存している。1953年に韓国戦争が休戦してから北朝鮮と対峙している韓国では、男性の兵役義務が憲法で定められ、全ての成人男性は、一定期間軍隊に所属し国防の義務を遂行しなければならない。つまり、韓国の男性は、満18歳で徴兵検査の対象者となり、19歳になる年に兵役判定(軍隊に行くか行かないか、どこで兵役の義務を遂行するか等の判定)検査を受ける。

 検査は、心理検査と身体検査が行われ、検査結果に資格、職業、専攻、経歴、免許等の項目を反映してから最終等級(1級~7級)を決める。判定の結果が1~3級の場合は「現役(現役兵)」として、4級の場合は「補充役(社会服務要員、公衆保健医師、産業機能要員等)」として服務する。一方、5級は「戦時勤労役(有事時に出動し、軍事支援業務を担当)」、6級は「兵役免除」、7級は「再検査対象」となる。

 兵役の期間は53年の36カ月から段階的に減り、現在は18~21カ月まで短縮された。月給(伍長の下、上等兵の上に位置する軍隊の階級・兵長基準)も70年の900㌆から2021年には60万8500㌆(約6万6700円、兵役は義務なので最低賃金を下回る)。参考までに21年の最低賃金は1時間8720㌆で、月209時間基準で182万2480㌆(約17万8790円)に大きく引き上げられた。兵役の期間も短くなり、給料水準も改善される等服務環境は大きく改善されたものの、若者は兵役を嫌がる。

 若者が兵役を嫌がる理由は、厳しい訓練、体罰、命令・服従等の縦社会への抵抗感、時間や行動の制限、学業が中断され就職が遅れるという不安感、集団生活や軍隊施設への不慣れ、軍隊にいる間に恋人が変心する可能性が高いなど様々だ。親たちも子どもの兵役期間中に戦争でも起きるのではないか、事故により怪我でもするのではないかという心配で除隊するまで不安でたまらない。

 特に兵役中の若者の最大の懸念は兵役の義務を終えた後の進路、つまり「就職」のことである。


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