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2023/06/09

<オピニオン>曲がり角の韓国経済 第90回  基礎年金の歴史から考える今後の年金改革   ニッセイ基礎研究所 金 明中 主任研究員

  • 曲がり角の韓国経済 第90回  基礎年金の歴史から考える今後の年金改革   ニッセイ基礎研究所 金 明中 主任研究員

    キム・ミョンジュン 1970年韓国仁川生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了(博士、商学)。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年からニッセイ基礎研究所。亜細亜大学都市創造学部特任准教授等を兼任。専門分野は労働経済学、社会保障論、韓日社会政策比較分析。

◆保険料率の引き上げで持続可能性の向上を◆

 韓国では年金改革に関する議論が活発に行われている。年金改革は労働改革、教育改革と共に尹錫悦大統領が推進している3大改革の一つである。年金改革のポイントは年金の持続可能性を高めるために1998年から9%に固定されている保険料率を引き上げることである。また、所得代替率を補うための対策として2008年から導入された「基礎年金」(導入当時の制度名は「基礎老齢年金」)の給付額の引き上げも議論されている。

 公的年金制度が導入された88年に70%であった所得代替率は、97年のアジア経済危機の影響で60%まで下がり、08年には再び50%に下方調整された。さらに韓国政府は09年から毎年0・5%ずつ所得代替率を引き下げ、28年には所得代替率が40%になるように調整した。所得代替率は40年間保険料を納め続けた被保険者を基準に設計されているので、非正規労働者の増加など雇用形態の多様化が進んでいる現状を考慮すると、多くの被保険者の所得代替率は、実際には政府が発表した基準を大きく下回ることになる。


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