ここから本文です

2024/05/10

<オピニオン>曲がり角の韓国経済 第101回  医療界との対立と医療空白事態   ニッセイ基礎研究所 金 明中 上席研究員

  • 曲がり角の韓国経済 第101回  医療界との対立と医療空白事態   ニッセイ基礎研究所 金 明中 上席研究員

    キム・ミョンジュン 1970年韓国仁川生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了(博士、商学)。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年からニッセイ基礎研究所。亜細亜大学都市創造学部特任准教授等を兼任。専門分野は労働経済学、社会保障論、韓日社会政策比較分析。

◆医師の地域・診療科偏在の解決急務◆

韓国政府の大学医学部の入学定員増の方針に反発し、研修医(研修医は、韓国では「専攻医」と呼ばれている)が集団で辞表を提出したほか、大手病院の医学部教授らも、研修医らの主張を支持するため、辞表を提出している。その結果、きちんと診療が受けられない人が増え、救急搬送されても手術が受けられずに患者が死亡した事例も報じられるなど医療現場の混乱が拡大している。

ことの発端は、今年2月6日に韓国政府が医師不足解消に向け、大学医学部の入学定員(現在3058人)を2025学年度の入試から2000人増やすことを発表したことである。
韓国政府は医科大学の定員を増やす理由として、韓国の医師数が、OECD加盟国と比べて少ないこと、医師不足と医師の地域偏在や診療科による偏在で、「小児科オープンラン(営業開始時間前に列に並ぶこと)」、「救急室のたらい回し」、「医療上京(首都圏と地方の医療格差が拡大した結果、医療機関が少ない地方から首都圏の医療機関を訪れる患者が急増している現象)」と呼ばれる現象が起きていること、急速な高齢化の進展により将来の医師不足が予想されていること等を挙げている。


つづきは本紙へ


バックナンバー

<オピニオン>