在日サッカー選手の育成を目指す「在日大韓蹴球団」が、きょう15日、都内で結団式を行う。在日本大韓蹴球協会が中心となって、昨年から結成に向けて準備を重ね、これまでに20人の選手と監督・コーチを決定したものだ。同蹴球団は来年春に行われる大統領杯に出場、有望選手のKリーグ(韓国のプロサッカーリーグ)入団を支援する。
在日大韓蹴球団、きょう発足
在日大韓蹴球団結成の動きは、昨年10月の韓国国体への参加がきっかけとなった。
在日本大韓蹴球協会は、毎年韓国国体に選手団を派遣しているが、海外同胞枠での出場に限られており、これは海外同胞チーム間で優勝を競う、いわば友好親善に焦点を当てた出場だった。
しかし、韓国のプロサッカーリーグの元選手や指導者から、「好素材の選手がいる。在日選手は韓国籍なので、外国人枠にも入る必要がないし、国内選手と違って兵役がないので、その分鍛えられる利点がある」との話があり、本格的なチーム作りに着手したものだ。
蹴球協会のメンバーが中心となって、資金集めや練習場確保に動き回る一方、団員募集を呼びかけ、3月から入団テストを行ってきた。韓国系選手だけでなく、朝鮮総連系の在日朝鮮蹴球団に参加していた選手や、朝鮮学校出身の朝鮮籍選手もテストを受けるなど、多彩なメンバーが集まった。また毎年春に行われる大統領杯(日本でいう天皇杯全日本選手権)への出場資格も得ることが出来、来年春に同大会で韓国の強豪チームと闘う道が開けた。
蹴球協会では3年計画でチーム作りをしたいと考えており、社会人の日産で監督経験のある山本裕司氏に蹴球団の監督を依頼、快諾を得た。団長は未定だが、近いうちに決定する予定。選手は18歳から25歳までで、大学生を主体にチーム編成を行っている。静岡県御殿場市で現在、月1回の練習を行っており、入団希望者は随時オープン参加させて、才能ある選手を集める計画だ。蹴球団入団予定者2人がすでに、Kリーグのスカウトの目にとまって、早々とKリーグ入団が決まるハプニングもあった。
同蹴球団が、Kリーグ入団のほかに目指しているのが、Jリーグの「特別枠」撤廃だ。Jリーグには現在、3人の外国人枠のほかに、1人の「特別枠」がある。日本国籍がなくても、「日本の学校」を卒業していれば入る資格が得られる、いわば「在日枠」だ。欧米や南米の選手と外国人枠を争わなくてすむ利点もあるが、在日選手が1チーム一人に限定されるという問題点もある。「有望な在日選手が次々と輩出されれば、特別枠の撤廃を検討するのではないか」と、宋一烈・蹴球協会会長は話す。
大きな夢を持つ同団だが、現実は月1回の練習が精一杯のチームだ。資金確保のために後援会を発足させ、後援会員は年1万円の会費を納めることも決定した。取りあえず1000人が目標で、現在300人が集まっている。結団式と同時に、後援会員を広く集めていく。問い合わせは03・5401・2582。
「若者の進路広げたい」
宋一烈蹴球協会会長
サッカー選手を目指す在日青年の選択肢を少しでも広げたいというのが、結団のもっとも大きな理由だ。Kリーグ、Jリーグに入団した選手はこれまでもいたが、その道を大きく、組織的に開くようにしたい。Kリーグで活躍した在日選手がJリーグにスカウトされることも起こるかもしれない。そうなれば特別枠の見直しも出てくるだろう。また在日青年が祖国に関心を持つと同時に、日本社会、韓国社会の在日への認識を高めることにもつながるはずだ。多くの在日同胞の支援をお願いしたい。