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2000/11/24

<在日社会>コリア映画祭、在日意欲作4本も上映

コリア映画祭で40本を上映

 韓国、北朝鮮、在日の映画40本を上映する「コリア映画祭2000」が、12月2日から29日まで、大阪・九条のシネ・ヌーヴォで開催される。

 韓国映画は、日本植民地時代の独立運動を描いた「自由万歳」「アリラン」「常緑樹」、南北分断の悲劇を描いた「誤発弾」「キルソドム」など30本、北朝鮮映画は、独立運動家・安重根の生涯を描いた「安重根と伊藤博文」、怪獣映画「伝説の大怪獣プルガサリ」など6本。

 そして在日映画は、故李学仁監督による在日問題をテーマにした「異邦人の河」、日本の高校生が強制連行の歴史を学ぶ過程を描いた「渡り川」など4本が上映される。過去の名作から最近のヒット作まで集めた貴重な企画だ。

 在日意欲作4本も上映

 これまで韓国映画祭、北朝鮮映画祭などの企画はあったが、今回、大阪のシネ・ヌーヴォで開催される「コリア映画祭2000」のように、韓国、北朝鮮、在日の映画を一緒に上映するのは初めてのことだ。製作年代も、解放直後の46年から最近まで半世紀に渡っている。故李学仁監督など、在日映画人の作品も上映される。

 「コリア映画祭2000」は、最近の南北融和の動きや日本での韓国映画ブームを受けて映画祭を企画したシネ・ヌーヴォと、韓国映画の配給権がまもなく切れる前にファンに見てもらおうと考えたアジア映画社が相談して、開催することになった。朝鮮総連に相談して、北朝鮮映画6本も準備した。

 また上映機会のほとんどない在日映画人の作品を紹介するため、故李学仁監督の作品を遺族の協力を得て上映、加えて金徳哲監督や金秀吉監督の作品も上映される。
 韓国映画は、激動の現代史をテーマにした作品が多い。46年製作の韓国映画「自由万歳」(46年、崔寅奎監督)は、独立闘争を描いた作品で、解放後最初に作られた韓国映画史の記念碑的作品だ。自由を求める民衆の熱気が伝わる映画だ。

 北朝鮮映画「花を売る乙女」(72年、朴ハク監督)は、革命歌劇を映画化した作品で、北朝鮮映画の最高傑作といわれている。また異色の娯楽映画として、高麗朝末期を舞台にした鉄を食う怪獣の映画「伝説の大怪獣プルガサリ」、17世紀に書かれた義賊が主人公の「洪吉童伝」を脚色したアクションエンタテイメント「怪傑・洪吉童」(86年、金キリン監督)が公開される。「遥かなる木霊(こだま)」(88年、朴チョンジュ監督)は、都市から山奥の牧場に赴任した幹部党員の苦悩を描いた「批判映画」である。

 在日映画人の作品には、在日社会の時代背景が色濃く反映されている。日本社会でまだ差別の色濃かった70年代、”在日”を隠していた青年が民族に目覚める姿を描いた「異邦人の河」(75年、李学仁監督)は、在日韓国人による初めての劇映画。ロック歌手のジョニー大倉が、本名・朴雲煥で主演している。同じ李監督の「詩雨おばさん」(77年)は、在日韓国人留学生が韓国でスパイ容疑で逮捕された事件をテーマにした問題作。

 「渡り河」(90年、金徳哲監督)は、高知県の四万十川流域で地元の歴史を学ぶ高校生が、強制連行された朝鮮人のことを調べるドキュメンタリー。94年キネマ旬報文化映画ベストワンを記録した。「尚美(サンミ)/蜜代」(2000年、金秀吉監督)は、在日コリアンの尚美と日本人の蜜代が一緒に生活する中で、お互いの立場の違いに気づきながら、友情を深める物語だ。

上映期間

 上映期間は12月2|29日、前売1回券1,100円、5回券5,000円。当日一般1,300円、学生1,100円、高、中、小、シニア1,000円。地下鉄中央線「九条駅」下車2分、06・6582・1416。

 70年代の青春知って(ユ・チンジャ・アジア映画社代表)

 南北和解が進み、在日社会でも世代交代が激しいこの時代に、韓国だけでなく北朝鮮、在日の映画をまとめて紹介できるのは意義深い。韓国映画が日本で初めて紹介されたのは80年代前半、安聖基主演の「風吹く良き日」だ。一般公開ではなく有志による自主上映だった。

 私が韓国映画を紹介したいと考えてアジア映画社を作った後も、まだミニシアターなどのない時代だったので、上映してくれる劇場を探すのが大変だった。それを考えると、最近の韓国映画ブームは隔世の感がある。映画製作に制約の多かった時代に、民族分断の痛みを表現した韓国映画人の作品をぜひ見てほしい。
 李学仁監督は、在日映画人の草分け的存在だ。60、70年代の在日2世の青春を描いた作品を、いまの3世が見てくれればうれしい。98年に病気で亡くなる直前にお会いしたが、また映画を作りたいと話していたのが忘れられない。

在日監督の登場願う(金秀吉・映画監督)

 自分が映画の道に進んだとき、李学仁、崔洋一、金徳哲、金佑宣氏ら本名で働く先輩映画人がいたことに勇気つけられた。在日社会の歴史と規模を考えるとき、在日映画人はもっと輩出し、もっと作品を作ってもよかったはずだ。最近、映画学校後輩になる若手在日の監督志望者も出てきているが、21世紀にはもっと登場してほしい。自分は今後、2世と3世の映画人をつなぐ役割を果たしたい。韓日や在日の企業は、在日映画人に資金を提供してもらいたい。

 新作の「尚美(サンミ)/蜜代」は、在日3世と日本人の女性が、本音で付き合う友情物語だ。共生の前に、まず友情が必要との認識で作った。シリアス・コメディーだ。大阪では夏に完成記念上映会を行った。来春には東京で上映会を行いたいので、協力者が出てきてくれるとうれしい。