南北で金15個以上を
200を超える国と地域から約1万5000人が参加し、28競技300種目のメダルを争う史上最大の五輪が9月15日、オーストラリアのシドニーで開かれる。
韓国は選手団398人(役員114人、選手284人)、北朝鮮は61人(役員29人、選手32人)を派遣する。韓国は乗馬、ソフトボール、近代5種、トライアスロン、カヌーを除く23競技に出場、得意競技のアーチェリー、ハンドボール、今大会から正式競技となったテコンドーなどで金メダル12個を獲得、総合10位以内を目指している。また男子マラソンの李鳳柱、人気競技の野球、サッカーにも期待が高まっている。銀、銅メダルは30個前後の獲得が目標だ。アトランタでは金7個を獲得、総合10位に入っている。
北朝鮮はマラソン、柔道、レスリングなど10競技に出場する。女子柔道52㌔級のケ・スニ、女子ウエイトリフティング58㌔級ジャークの李ソンヒらがメダル有望選手だ。北は前回五輪で金2個、総合33位を獲得しており、今回はそれ以上の成績を目指している。
今大会はまた、両国選手団の成績もさることながら、南北交流にも注目が集まっている。開幕式での南北選手団の同時入場行進は、今回の五輪での大きな話題となるだろう。大会は、10月1日までの17日間行われる。
シドニー五輪に出場する韓国選手団は5日に結団式を行い、8日にシドニーに向けて出発する。一方、北朝鮮選手団は10日にシドニー入りする。両国選手団でとも、メダル獲得を国民に誓っての出発である。一方、在シドニーの韓国人は両国選手団を出迎えての歓迎行事や夕食会などを予定しており、開会式にも統一旗を持って応援する予定だ。
テコンドーは金3個
今大会の注目競技は、なんといっても今大会から正式採用されたテコンドだ。李相哲選手団長も、「シドニー五輪ではテコンドが正式種目に採択されたので、アトランタ五輪より最低3つ以上の金メダル獲得の可能性がある」と話している。
しかし、実力的には世界最強に違いない韓国テコンドも、出場選手の大部分が国際経験不足に悩まされている。特に中東勢の多彩な蹴り技、欧州勢のスピードとパワーは、金メダルをめざす韓国選手にとって大きな驚異となるだろう。
97年世界選手権大会と98年アジア選手権大会を制覇した女子57キロ級のチョン・ジェウン(20)が、チーム最年少ながら最も期待されている。
世界最強の韓国アーチェリーは、今大会でも女子個人戦と団体戦で金メダルが確実だ。キム・スニョン、キム・ナムスン、ユン・ミジンで構成された女子代表チームは、自他ともに認める世界最強。84年ロス五輪から続く女子団体戦、個人戦4連覇の偉業を引き継いでくれるだろう。
男子チームは、イタリア、ロシア、米国などと熾烈な争いを繰り広げることが予想される。96年アトランタ五輪団体戦決勝で、米国に敗れ銀メダルにとどまった男子チームは今月初め、ユーロピアングランプリ決勝でイタリアを破るなど勢いに乗っており、金メダルを期待してもいいだろう。
韓国柔道は、64年東京五輪で在日同胞の金義泰が初の銅メダル獲得後、これまでに金7、銀10、銅11という成績を収めている。84年ロス五輪からは金メダル獲得が途絶えたことがなく、今回も金メダル1つ以上獲得を期待している。
女子では、引退後、復帰した鄭成淑がアジア大会(94年)、世界選手権(95年)、今年のアジア選手権を制覇した強豪だ。シドニーで金メダルを取れば史上初のグランドスラム達成となる。
鄭成淑と共に復帰した曺敏仙の五輪二連覇も関心を集めている。男子では日本の井上康生選手との激闘が予想される100㌔級の蒋成皓をはじめ、趙麟徹もアトランタ銀の屈辱を晴らす可能性は十分だ。
他の有望な競技では、射撃に期待がかかる。特に開会式翌日の女子空気小銃で、最近の演習射撃で競うように400点満点を射ち、最高の調子を見せているチェ・デヨン(19)とカン・チョヒョン(18)の「十代コンビ」の金メダルで勢いがつけば、大量のメダル獲得も夢ではない。
雪辱期すマラソンの李鳳柱
マラソンの李鳳柱(イ・ボンジュ、三星電子)もアトランタ五輪で三秒差の銀メダルにとどまった雪辱を期している。シドニーのマラソンコースは、並みの体力とスピードでは耐えられない史上最悪の「地獄コース」と予想されており、ライバルのポルトガル、スペインのヨーロッパ勢とケニア、エチオピアを主軸としたアフリカ勢に勝つためには、35㌔地点以降の上り坂と下り坂が続く区間が勝負となるだろう。李鳳柱は大会後、婚約者の金ミスンさんと挙式の予定で、金メダルを贈り物にすると張り切っている。
卓球では、五輪前哨戦であった先月のブラジルオープンで優勝した柳智恵・金武校の女子ダブルスがソウル五輪以来、十二年ぶりの金メダルを目指している。人気の高いサッカーは8強入り、野球はメダル獲得が期待されている。
政府もバックアップ
大躍進が期待される韓国選手団の志気を高めるため、政府もバックアップを惜しまない。政府の文化観光部はこのほど、五輪金メダリストの年金をこれまでの一ヶ月60万ウォンから100万ウォンに引き上げ、複数の金メダルを獲得した選手には、年金以外に特別ボーナスを支給すると発表した。
このように国民や政府から物心両面にわたる支援を受けた韓国選手団は、予想として金メダル12個、メダル総獲得数43、総合8位程度は狙えるだろう。英国の世界的な保険会社ロイドは、韓国が金メダル15個を取る可能性を15%と予測している。いずれにせよ、南北選手団が世界の舞台で大活躍してくれることを期待したい。
野球は日本戦が難関
野球は看板投手の鄭珉台(現代)と具台晟(ハンファ)、主砲の李承燁(サムスン)を筆頭とする24人(うち23人がプロ選手)の韓国版「ドリームチーム」を結成、大きな注目を集めている。チームの特徴としては、キューバ、米国などの「大リーグスタイル」攻略法として、林昌勇(三星)、朴石鎮(ロッテ)ら、三人のアンダースローやサイドスロー投手を選抜した。注目はメダル獲得に向け、最大の難関とされる24日の日本戦となるだろう。
日本が早々と松坂大輔(西武)の先発を予告すると、その攻略に向け韓国は、昨年まで中日ドラゴンズに在籍し、日本野球に造詣の深い宣銅烈氏をアドバイザーに就任させた。現在、宣銅烈氏がビデオカメラを片手に日本各地を転々とし、選手の分析を急いでいるという情報も伝えられている。
韓国は右腕投手である松坂の主な武器であるスライダー対策として、スライダーに強い左打者中心のオーダーで松坂を打ち崩し、交代した左腕投手を朴栽弘(現代)、金東柱(斗山)などの右の強打者に、今シーズンに入りホームランを量産している宋志晩(ハンファ)を加えたダイナマイト打線で日本を撃破する作戦だ。また、五輪での上位入賞がプロ野球ファンはもちろん、全国民の希望であると判断した韓国野球委員会(KBO)が早々と理事会を開き、9月8日から28日まで21日間にわたるペナントレース中断を決定するなど、ヤクルトの古田捕手の選出問題でプロとアマが対立した日本とは比較にならないほど、バックアップ体制も充分だ。
在日の朴康造は補欠に
サッカーの五輪代表チームも、上昇気流にある。98年12月のチーム結成以来、公式試合で26勝2分2敗を記録した。特に今年は、オーストラリア4カ国親善大会優勝、ユーゴ戦2引き分け、イラン4カ国親善大会優勝など、無敗の勢いを見せている。
昨年9月の韓日戦の惨敗以後、課題であった守備の不安が改善され、李天秀、高宗秀など中盤のゲームメーカーが補強され、歴代五輪代表チームの中でも最高の組織力を身につけた。
これに三人枠で推薦された洪明甫の加勢により守備の安定感が高まり、金龍大が守るゴールも鉄壁だ。FWには現在Kリーグ得点王の金度勲が選ばれた。
在日同胞初の韓国代表を期待された朴康造は、図らずも課題であった中盤に負傷明けの高宗秀、U-19代表の李天秀など、韓国が誇るタレントが相次いで選出されたことを受け、惜しくも補欠に回ってしまった。韓国代表は14日のスペイン戦を始まりに、17日モロッコ、20日チリと対決し、最低1勝1分け(勝点4)を記録すれば、目標のベスト8進出を狙うことができる。