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2000/08/18

<在日社会>南北離散家族、涙の再会

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 15年振りの南北離散家族の再会がついに実現した。ソウルと平壌では涙の抱擁が繰り返され、その様子は全世界に発信された。離散家族にはそれぞれ、南北分断で受けたドラマのように数奇な人生があった。

 北側訪問団のチョ・ジンヨンさん(69)は、50年の歳月を経て母のチョン・ソンファさん(94)と対面した。興奮したチョンさんはその場で失神。「母さん、親不孝の息子が来ました」と泣き叫びながらチョさんは水を飲ませようとしたが、チョンさんは意識が戻らず、救急車で病院に運ばれた。

 訪問団最高齢の黄イブンさん(84)さんは、兄嫁のカン・スンアクさん(86)や甥の黄ボヨンさん(62)など親族と対面、「お互い生きていて、こうやって会えるとは」と涙を流した。カンさんも「50年経ったが、すぐにわかった。一目会いたいと思いつづけていた」と泣いた。黄さんはビナロン発明で知られる故李スンギ博士の夫人だ。

 北を代表する朝鮮画の画家チョン・チャンモさん(68)は、二人の妹ジュンヒ(61)とナムヒ(53)をずっと抱きしめた。チャンモさんは「妹たちにやっと会えた」と泣き、二人の妹は「兄さん、兄さん」と叫んで泣き崩れた。

 ●夫婦とも離散家族

 韓国側訪問団の中には、ともに配偶者と生き別れたまま再婚した夫婦がいる。夫の李ソンヘンさん(81)と妻の李ソンジャさん(82)だ。李ソンヘンさんは50年前、戦火を避けて非難の途中、大同江近辺で妻の洪キョンオクさん(76)と離れ離れになった。李ソンヘンさんはその後、韓国でやはり夫と生き別れた李ソンジャさんと再婚していた。

 洪さんを最初見た李ソンヘンさんは、洪さんとすぐにわからなかった。26歳の美しい妻の顔しか記憶になく、あまりにも老けた洪さんが実感できなかったからだ。洪さんもすぐに夫とはわからなかった。李さんは「一人で子どもを育てて苦労したろう」と洪さんをいたわった。洪さんは李さんとの3人の子どもを育ててきたのだ。

 面会場に来た長男のチンイルさん(56)と三男のチンソンさん(51)は、「父は死んだと聞いて育った。ずっと法事をしてきた」と涙ながらに語った。

 一方、李ソンジャさんは長男の朴ウィシクさん(61)さんとの対面を果たした。李ソンジャさんは47年、南に行った夫を探すため北に子どもを残して探しに行ったが、38度線の緊張が高まり、そのまま帰れなくなった。そして当時の夫は死亡、李ソンヘンさんと再婚していた。すでに孫までいる初老の息子をすぐには判別できなかった李ソンジャさんだが、少しすると手を握り合って泣いた。翌日の個別再会で李さんは「当時7歳だった甘えん坊の息子が、いつのまにか孫まで持った」と、感慨深げに話した。

 ●金の指輪

 李ファンイルさん(82)は、北に残した妻と息子、娘に再会した。この日のために韓国の現在の妻が、大切な金のネックレスを溶かして作ってくれた3つの指輪をそれぞれに贈り、半世紀ぶりの家族写真を撮影した。

 脊椎疾患のため車椅子で訪問団に加わった金グムジャさんは、いとこたちと再会したが、再会を心待ちにしていた兄が2年前に高血圧で亡くなったと聞かされると、大声で泣きくずれ、立ち上がることが出来なくなった。

全在紋/桃山学院大学教授

 離散家族の再会をテレビで見て、本当に目頭が熱くなった。冷戦の悲劇が、どれだけ一般庶民を苦しめてきたことだろう。金大中大統領の英断が、今回の再会を実現したと思う。西ドイツは過去にブラント首相が1民族2国家論を提唱し、決して統一をあせらなかった。そして東ドイツから統一を望むようになった。このドイツの知恵を生かすべきだ。南北の帰すうは、すでにはっきりしている。韓国は決して統一をあせらず、じっくりとすすめてほしい。一方、在日社会を考えると、これは統一を急ぐべきだ。在日社会で最も大切なのは民族教育だが、これは民団に比べて総連がはるかにしっかりと行ってきた。その民族学校がどこも経営に苦しんでいる。日本への同化を防ぎ、民族教育を守るため、在日の2,3世は協力して声を挙げてほしい。

田月仙/歌手

 みな同じと思うが、感激で涙が止まらなかった。55年も分断が続くとは、何と悲しいことだろう。南北分断は、あまりにも多くの人を傷つけた。今回の再会が、引き裂かれた人々の心が一つになる第一歩になればうれしい。

 そして私も南北双方に親類や知人がいるが、自由に会うには制約が多い。海外のコリアンが、自由に南北に行けるようになってほしい。そして在日も分断のしがらみから一日も早く抜け出してもらいたい。私は20年間歌手活動をしているが、心の底に常に統一への思いを持ち続けてきた。今後もその思いを胸に歌いつづけたい。

李怜香/社会保険労務士

 再会を果たした人たちは、本当にうれしいだろう。ただ今回、面会時に制限事項の多かったのは気になった。もっと自由に会わせてあげたいと思う。

 韓国が民主発展するに伴って、在日の地位や日本人の見方も変わってきたのは否定できない事実で、南北が統一してすばらしい国を築けば、在日にも好影響を与えるはずだ。

 また民団や総連に分かれているが故に、同じ地方に住む在日同士でも、まったく行き来がないのを見てきた。最近では交流の動きも出てきているようだが、もっと進めてほしい。責任者同士の交流が進めば、一般同胞の交流は加速化すると思うがどうだろう。

姜在彦/花園大学講師

 離散家族は南北双方とも高齢者が多く、残された時間は多くない。恒常的に会える措置をとってもらいたいし、訪問団の数も増やしてもらいたい。また墓参をしたり、家庭を訪ねたいのは自然な情で、それが禁止されているのは本当に残念だ。それらが自由に出来てこそ、本当の離散家族の再会ではないだろうか。また北側の訪問団が著名人ばかりという話があるが、回数が増えれば普通の人が増えてくる。ともかく継続することだ。

 在日でも、北への帰国事業で帰った親族に会うことを待ち望む人々がいる。これも離散家族だ。すぐに会うことが出来なくても、安否や現住所を伝えることは可能なはずだ。北が積極的に情報提供してくれることを望む。