自民、公明、保守の与党3党による「国籍等に関するプロジェクトチーム」(太田誠一座長)はこのほど、「特別永住者等の国籍取得の特例に関する法律案」(仮称)の要項案をまとめた。現行の許可制度を大幅に簡素化し、法務大臣への届出だけで日本国籍を取得できるよう改めている。プロジェクトチームは同案を与党内部で早期に確認し、5月中に議員立法案として国会提出し、今国会会期中に成立させる意向だ。
与党3党の「国籍等に関するプロジェクトチーム」がまとめた「国籍取得特例法案」は、特別永住者であれば犯罪歴があっても日本国籍を無条件で取得できるもので、これまでの煩雑な手続きや厳しすぎるとされた帰化条件を大幅に緩和するものだ。
日本の常用漢字や人名用漢字になかった韓国人の姓名についても無条件に認める方針で、「崔・鄭・姜・趙・尹」なども使用できる。
今後、与党内で協議を重ねた後、5月中に法務委員会に提出する予定で、今国会会期中に議員立法として法案成立させたいとしている。
現行の帰化制度は、①居住要件=引き続き5年以上日本に住所がある②素行要件=素行が善良③生計要件=自分や家族らによって生計を営める、などの条件を定めている。また最終的な帰化決定は法務大臣の裁量権に属するため、不透明性も指摘されていた。
同チームは数回の論議を重ねた後、今年2月に①帰化条件を緩和した許可制②届出だけによる取得③国籍選択制の3つの骨子案を明らかにしていたが、その中から届出制を選択したわけである。
これについて自民党政務調査会では、「帰化行政にはっきりした基準がなく、裁量行政で決まることには以前から批判が多かった。特に特別永住者については、通常の帰化条件を当てはめるのはおかしいとの意見が多く、一気に簡素化を進めることになった。戦後処理の一環として考えている」と説明している。
同プロジェクトチームはもともと、「永住外国人への地方参政権付与法案」が国会に提出され審議入りとなる中、「外国籍者に参政権を持たせるのは反対であり、参政権を要求するなら日本国籍を取得すべき」との意見が自民党内から出て、作られた経緯があるが、「地方参政権はすでに国会で継続審議されており、国籍法のプロジェクトチームでは切り放して論議することで確認済み」としている。公明党は、「自民党と協議しているが、早期に両法案を成立させたい」意向だ。野党・民主党は「両方成立させることが望ましい。与党の動きを見ながら対応を決めたい」としている。共産党も「地方参政権付与法案の審議を引き延ばしておいて、国籍取得緩和法案を先に通過させようというのはおかしい。両方とも成立させるよう与党と話し合う」と話す。
在日韓国民団は「帰化要件緩和の動きが永住外国人に地方自治体選挙権を付与しないための代替措置として出ているなら、それは問題の『すり替え』であり、私たちは到底容認できるものでない。永住外国人地方選挙権の成立が最優先」と主張する。在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)は、組織見解を出してはいないが、機関紙の朝鮮新報で「同化政策ではないか。在日の人権保障が先だ」と批判している。