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2001/04/20

<在日社会>肝臓ガン 李滉君を救おう!

 肝臓がんで移植手術を受ける必要があると診断された在日韓国人の青年、李滉さん(18)を救うため、在日韓国民団岐阜県本部と在日本朝鮮人総連合会岐阜県本部がそれぞれ救う会を結成、移植手術のための募金活動を行い、両者で約2900万円の募金を集めて両親に手渡した。李さんは19日に渡韓して韓国の病院に入院、脳死肝移植のドナーを待つ。

 手術を待つのは、岐阜県各務原市在住の李慶八(岩城慶八)さんと妻の趙初枝さん(岩城初枝)さんの長男・李滉さんだ。

 岐南工業高校3年生の滉さんは自転車部副主将を務め、2000年6月の東海総体では4000㍍速度競争で4位入賞している。岐阜総体を前にした同年7月8日、腹痛に襲われて市内の病院に緊急入院。精密検査の結果、肝臓がんと判明したものだ。

 そのまま入院生活を続け抗がん剤の投薬治療を続けてきたが、担当医から「投薬は限界がある。肝臓を取り替える移植手術を行わないと助からない」との話があった。

 その肝移植も「日本では脳死者からの提供がまだ少なく、海外の方が早期手術の可能性が高い」との説明で、海外での移植手術を決断した。

 しかし、海外での移植手術には治療費、入院費、渡航費などで少なく見積もっても2000万円(医療費1300万円、滞在費700万円)が必要であり、費用の工面に困った両親は友人、知人に相談した。

 慶八さんが愛知の朝鮮高級学校を卒業している関係で、同級生らに相談したところ、李賢植さんが中心となって総連岐阜本部に働きかけ、「李滉君を救援する会」(李賢植代表)を結成して募金活動を始めた。

 朝鮮大学をはじめ、全国の朝鮮学校に募金の輪が広がっていった。李代表は「あっという間に支援の輪が広がっていった。同胞愛をこんなに感じたことはない」と語る。

 話を聞いた在日韓国民団岐阜県本部も、慶八さんらが韓国籍だったこともあって募金活動を決定、3月1日に「李滉君を支援する会」(申相哲代表)を作って活動を始めた。

 また岐南工業高校や、滉さんが卒業した小・中学校のPTA、教職員、児童、生徒など、日本の人々の間にも支援の輪が広がっていった。

 募金は今月11日までに合計で628件、2902万8861円が集まり、家族のもとに届けられた。

 両団体はこのほど岐阜県庁で合同記者会見を行い、「民団系と総連系の団体が、このような運動を展開したのは岐阜県では初めて。在日コリアン、日本人、多くの人の熱い善意に感謝したい」と述べた。募金運動は4月末で締め切られ、その後、手術の経過報告などを行って解散することになる。

 父親の慶八さんは「多くの同胞、日本の方々の支援をいただいたことに、本当に感謝している。息子の手術が成功して元気になった姿を、支援してくれた人に見せたい」と語った。

 母親の初枝さんも「こんなに早く渡航できるとは思わなかった。本当に感謝しています。早く手術を受けさせてやりたい。学校の配慮で無事卒業もさせてもらって、ありがたいことです」と話した。

 県内の松波総合病院に入院中の滉さんは容態は安定しており、19日午前、移植手術の検査のため、両親、松波病院の担当医、民団関係者らとともにソウル中央病院に向かった。

 今後は同病院で入院生活を続けながら、ドナー提供者が現れるのを待つ。