在日韓国民団の在日韓国人意識調査委員会が、このほど行われた第54回定期中央委員会で、「2000年度在日韓国人意識調査中間報告書」を発表した。調査は、2000年9月から11月にかけて行われ、民団保有の「国民登録」名簿の登録者(約46万人)のうち満15歳から満64歳までの約35万人の中から、男女個人2924人に調査票を郵送し、1325人(男性1974人、女性950人)から回答を得た(回収率45・3%)。これまでの意識調査より年齢層を広げ、女性の声をより集めるようにした。
調査にあたったのは、民団中央本部の金亮秀氏、横浜市立大学教員の滝田祥子氏、静岡文化芸術大学の李孝徳氏、テンプル大学大学院生の朴和美氏、文教大学教員の椎野信雄氏、弁護士の張学錬氏の6人。
質問事項は、「基本的属性と生活構造」として性別、年齢、誕生地、学歴、就業形態、結婚、同居人続柄、家族の国籍、「生活、社会関係」として名前の使用、民族学校通学の有無、韓半島とのかかわりなど。
「『民族』意識の現在として在日のアイデンティティ、日本国籍取得への意思、在日が求める公民権・社会権、そして「日常生活と家族」として、在日の日常の悩みと不安、教育に関する問題などが行われた。
在日対象のアンケート調査で多く見られる「名前の使用」を見ると、本名使用者は13・4%、50%が通名で生活し、「状況によって使い分ける」が35・6%となった。本名を使って生活している人は、少数派に過ぎないことがわかる。
低い韓国語使用
在日の言語使用については、「いくつかの単語は韓国語を使うことがあった」(58%)、「韓国語をまったく耳にしたことがない」(11・5%)で、家庭での韓国語使用状況はかなり低いことがわかる。韓国語能力については、「こみいった議論ができる」は9%で、「簡単な日常会話」が20%。年代が若くなるほどできなくなり、10代は「こみいった議論ができる」はゼロとなった。この在日の韓国語能力については、さらに調査が求められるところだ。
自己肯定は4割
家族が来日したいきさつを聞いたことがある人は、全体の7割近くにのぼり、「まったく聞いたことがないし、知りたいとも思わない」と答えた人は、ごく僅か(3・2%)であった。家族の歴史についての関心の高さがうかがえる。「民族」という言葉に何らかのポジティブな感情を持っていた人が約6割という結果と合わせて、日本人家庭との違いが鮮明に出た部分だ。
自己意識を見ると、「在日として生まれてよかったと思う」との肯定派は37・9%で、「在日として生まれなければよかった」という否定派の14・3%を超えた。しかし、「考えたこともない」が21・7%、「わからない」が22・6%を示しており、「在日」という自己確認が肯定的な形で捉えられているとは言い切れない。
また韓国名を使う場合に比べて、通名を使う場合は「在日韓国人(朝鮮人)として生まれたこと」に肯定的な割合が低く(前者53・1%、後者29・1%)、否定的な割合が高いこと(前者9・0%、後者20・1%)もわかった。
韓国語使用など「民族的なもの」に具体的に触れる経験や、「在日同胞の友人がいる」場合には、在日に生まれたことへの肯定的答えが高くなっていることが判明した。