2001年9月11日に起きた米テロ事件から1年が過ぎた。事件の後遺症がいまも世界に重く残るなか、釜山アジア競技大会(9月29日―10月14日)はアジア、そして世界平和へのメッセージを込めた意義ある大会となる。韓国、北朝鮮の開会式同時行進、在日選手の出場も実現し、韓半島の平和にとっても大きな大会だ。
アジア大会の参加国・地域は、アジアオリンピック評議会(OCA)43加盟国の9887人(選手6699人、役員3138人)に東チモールの30人(予定)を加えた44カ国・地域から9900人を超える人々が参加する歴代最多の大会だ。韓国は最も多い1008人、北朝鮮は318人、日本は988人が参加する。
韓国・済州島の漢拏山と北朝鮮・白頭山でそれぞれ採火された聖火が7日、軍事境界線近くの韓国・坡市の臨津閣で一つになり、聖火ランナーによって23日間韓国内をリレーした後、釜山に到着する。また開会式では南北同時入場が実現するなど、民族和合を全世界にアピールする大会にもなる。
在日選手は韓国側選手団には現在いないが、北選手団には重量挙げ男子など6競技14選手が出場する。また日本選手団には、在日3世で昨年9月に日本国籍を取得した柔道男子81㌔級の秋山(秋)成勲選手がいる。
秋山選手は、「大学卒業後、釜山市役所に勤務し韓国代表チームに入っていたので、釜山での大会には特別な思いがある。韓日両方から応援してもらえるのはうれしいことだ。ライバルは多いが、出場するからには優勝を狙いたい。韓国、北の選手たち、そして両国代表で出る在日の人たちと、同じスポーツ選手として仲良くなりたい。特に北朝鮮は日本のメディアで悪く書かれているが、逆に北の人たちが日本や韓国をどう見ているのか聞いてみたい。お互いに相手のことを知れば誤解もなくなるはずだ」と話す。
米テロ事件後、米国は北朝鮮をイラクとともに「悪の枢軸」国家と呼んでいる。その北朝鮮、イラクに加え、アフガニスタン、東チモールなどの新生国家が出場する今大会は、アジアの平和にとって大きな意味を持つ。
スポーツライター(本紙客員ライター)の大島裕史さんは、「これまでアジアのスポーツは政治に翻弄されてきた長い歴史がある。韓国と北朝鮮はもちろん、中国と台湾の問題もあった。イスラエルをアジアに加えるかどうかという問題もあった。その対立の火種を抱えたアジアがスポーツ交流を通して信頼を作っていくために、今大会の意義は大きい。特に南北関係にとっては、北から選手団だけでなく応援団も随行。北朝鮮の旗も韓国内で振られる大会だ。7日に行われた南北サッカー大会を取材したが、北の選手に対して観客席からとても暖かい声援が送られていた。アジア大会が南北本格交流の一助になることを期待したい」と強調した。