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2002/11/29

<在日社会>日光で朝鮮通信史再現

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    朝鮮通信使の再現行列が東照宮までパレードした

 韓日国民交流年を記念し、韓国ソウルから栃木県日光市まで9都市を結ぶリレーイベント「JAPAN-KOREA市民フェスティバル2002」の最終イベントが24日、日光市で行われ、日光東照宮と日光山輪王寺の境内では、江戸時代に日光を訪問した朝鮮通信使の行列が再現された。

 朝鮮通信使は江戸時代を通じて12回、日本を訪れている。そのうち第4回、5回、6回の一行が日光まで参詣し、徳川家の祖廟(先祖の魂のよりどころ)となる徳川家康の祀られている日光を訪れている。

 徳川家にとって使節団が日光を訪れることは、幕藩体制にとっての日光の重要性を内外に表明する意味があったとされている。また使節団が奉納した数々の品は、いまも輪王寺に奉納されており、東照宮の入り口には使節団が寄贈した鐘が飾られている。

 今回のパレードは日光までの道筋をたどることで、善隣友好の足跡を今日に伝えるために行われた。

 まず韓国・ソウル女子商業高校の生徒らが民族楽器を演奏しながら行列を先導し、色鮮やかな民族衣装をまとった県立日光高校の生徒ら約200人が異国情緒あふれる時代絵巻を繰り広げた。

 日光山輪王寺を出発した行列は、東照宮五重塔前で信書交換式を行った。真杉瑞夫・日光市長が、「通信使の『善隣友好・誠信交隣』の基本姿勢が日韓新時代を築く上で重要だ」とあいさつ。

 通信使の正使役である文尚柱・韓国国際親善文化協会長は、金大中大統領の「今回の交流を通して、21世紀のパートナーシップがより深まることを望む」との祝賀メッセージを代読し、友好発展を誓った。

 同市内では、趙世衡・駐日韓国大使の記念講演や、韓国料理の実演会なども行われ、多くの人でにぎわった。韓国料理のチジミ(韓国風お好み焼き)とトック(韓国風雑煮)1000食を用意した在日韓国婦人会の崔龍珠会長は、「8月に日光市から相談があり、婦人会会員で準備を重ねた。文化交流は食から始まると考え、値段も赤字覚悟で安くし、求めやすくしている。地鶏10羽をつぶしてトックの材料にし、厨房から実演販売まで40人でフル回転だ。韓国料理を通して韓国の魅力に触れてほしい」と話した。

 運営に協力し通訳も務めた林宏・民団栃木団長は、「日光という400年前の朝鮮通信史の歴史舞台で、パレードが再現されたことは大きな意味がある。韓日友好にまた共同作業で催しを成功させたことも大きい。作業を通して共感から共生が生まれていくと確信する。今後も地域交流に貢献したい」と述べた。

 輪王寺宝物殿では、通信使の遺宝を展示した「日光に残る朝鮮の名宝―明暦元年朝鮮通信使」展を、来年1月14日まで開催している。