滋賀県米原町(村西俊雄町長)が市町村合併問題のあり方を問う住民投票で、永住外国人にも投票権を認め、3月31日に実施してから約2カ月。投票前に届いた電話、手紙、メールの80%が反対意見だったが、実施後は逆転し、激励の手紙やメールが80%以上を占めるようになった。地域の外国人住民とともに町づくりをするのは当然のことであり。それが認められた証し」と、村西町長は振り返った。
村西町長が、市町村合併問題で住民投票条例を提案する考えを議会に明らかにしたのは昨年6月。条例案の中に永住外国人にも投票参加の権利を与え、1月の議会ですんなり承認された。
しかし、同条例案の承認が報道されると全国的な反響を呼んだ。米原町役場に反対意見が殺到し、町長を「売国奴」とした脅迫文も寄せられた。村西町長は、「地域に住む外国人に町づくりに参加してもらうのは当然」との信念で、投票実施に向けて準備を重ねた。
住民投票資格のある永住外国人は31人。町では永住外国人を集めた会議を開催し、参加を要請した。しかし、外国人宅にも脅迫文が届き、「これでは恐くて投票に行けない」との声が出る事態になったため、町長が一人ひとり訪ねて説得を重ねた。31人中、投票の登録をしたのが20人、実際に投票したのが13人で、そのうち不在者投票が6人という数字になったのは、そういう理由がある。
村西町長は、「嫌がらせの影響で(投票所に行くのを)ためらった外国人住民が出たのは残念だったが、13人が投票してくれたことは意義が大きい」と振り返る。
投票から2カ月。町ではこの間の活動をホームページで紹介している。
海外在住邦人から「私も外国に住んでいるが、日本国籍を失いたくないと思っている。外国籍者に住民投票権を与えるのは大切だ」との手紙も寄せられたとのことだ。
村西町長は「活力ある地域社会を作るには住民の声を聞き、みんなで作っていかないとだめだ。日本にこれだけ外国人が増えたのだから、外国人の声を取り入れるのは当然。共生社会を作るために今後も努力したい」と話す。
住民投票は今後、日本の各地域で増える見込みだが、米原町のように外国人住民にも認めていくことが期待される。それが外国人参政権運動にも好影響を与えるだろう。