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2002/04/19

<在日社会>あすか信組がスタート

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    あすか信組新宿支店がオープン(15日)

 あすか信用組合(本店・仙台市、鄭圭泰理事長)が15日スタートした。北東商銀が2000年12月に経営破たんした東京商銀の事業を引き受けて、新たな名称で再出発する在日韓国人信用組合協会加盟の在日信組で、北海道、宮城県、東京都、埼玉県の1都1道2県にまたがる広域なエリアをカバーすることになる。折しも、4月1日からペイオフ(預金元本1000万円までと利息の支払いを保証する措置)の凍結が解除され、金融機関の経営環境は厳しさを増している。これを乗り切るため、あすか信組は思い切った改革に取り組む構えだ。

 この日午前9時、新宿支店(旧東京商銀本店)前では関係者がテープにはさみを入れ、鄭理事長が「全役職員が力をあわせて頑張りますので、一層のご協力をお願いします」とあいさつした。

 あすか信組によると、この日一日だけで80億円のご祝儀預金が集まった。東京地域では預金流出一辺倒だっただけに、関係者はほっと胸をなでおろした。また、全国信用協同組合連合会があすか信組に15億円を劣後ローンで出資した。これは資本増強のため、旧北東商銀が事業譲受に際して申し入れていたもので、在日信組に対しては初めての出資となる。

 旧東京商銀から預金453億円、貸出金383億円を引き受け、あすか信組としては15日現在で預金残高960億円、貸出金残高614億円になる。

 今回のあすか信組は小が大を飲み込む形で誕生した。旧北東商銀は4店舗(役職員45人)だが、旧東京商銀は15店舗を擁し、資金量や人員などではるかに大きかったからだ。

 また、横浜商銀、「ドラゴン銀行設立委員会」との三つ巴の入札戦で最終的に勝利したのは昨年末で、わずか3カ月で新体制入りするハイスピードぶりだった。

 本店は当面仙台におくが、東北4商銀との合併後に本部機能のある新宿を本店にする方針だ。東京商銀破たんから1年4カ月になり、東京、埼玉地域の在日社会で金融機能がやっと正常化したことになる。

 だが、信組を取り巻く環境は厳しく、今後生き残るためには多くの課題に取り組まなければならない。あすか信組は旧東京商銀の15店舗のうち引き継いだのはほぼ半分の8店舗。再雇用も144人に圧縮された。

 今後、一層の効率化を図るための対策に取り組むことになろう。資本面でのさらなる充実も必要であり、これは韓信協加盟組合全体の問題でもあるが、韓国政府への支援取り付けの行方も注目点の一つだ。

 鄭理事長は「リテール(小口)重視」を打ち出しているが、東京地域では特に顧客の信頼を得る活動が緊要となっている。そのためには情報開示を徹底するだけでなく、情実融資などの不正行為を一掃する必要がある。