9月29日に開幕する釜山アジア大会。同大会出場のための選考会が韓日両国で行われているが、柔道、空手で同大会出場を狙う在日の有望選手がいる。柔道の秋山成勲(写真=上)、そして空手の安健太選手(写真=下)だ。
秋山選手は1975年、大阪生まれの在日4世。韓国名は秋成勲(チュ・ソンフン)。近畿大学を卒業して、現在は平成管財(大阪)に所属している。韓日両国で代表チーム入りの経験を持つ。2001年9月に日本国籍を取得。釜山アジア大会で81㌔級日本代表の座を目指す。アテネ五輪の有力候補でもある日本柔道界期待の星だ。
父は在日3世、母は韓国生まれ。在日韓国人の密集地、大阪・生野で育つ。父がかつて近畿大学の柔道選手で、幼いときから父の指導を受けて柔道を始めた。
「中学まで本名で通った。差別の経験もないし、在日が差別を受けてきた歴史もよく知らない。在日が多く住む地域だったし、在日に生まれたのは当たり前という感じだった。高校に入って日本名に変えた。柔道部の活動は日本名がいいと思ったから」
高校時代、韓国籍のため全日本の合宿に参加することが出来ず、大学でも講道館杯に出られなかった経験を持つ。国籍を理由に全日本の大会に出られなかったとき、「国籍の意味は何だろう、試合に出たい」と痛感した。
また大学卒業後、もう上達しないのではと柔道に限界を感じたが、「若く結婚して柔道をとるか母を取るか悩んだ父のことを思い出し、柔道を続けよう」と決意した。
その後、韓国代表チーム入りを果たし、2001年4月のアジア選手権で優勝。「日本で生まれ育っているし、実力的に日本代表入りの可能性があるのだから挑戦したい」との思いが強くなり、日本国籍を取得した。
「両親も韓国柔道界の人も、『好きな道を歩め』と言ってくれた。韓国の友人には寂しがっている人もいたが、夢である日本代表を果たしたかった。日本国籍を取っても、在日である自分に変りはない。選考会では必ず優勝したい。ストイック過ぎるのはこれまでの経験からよくないとわかっているので、自然体で臨む。アジア大会は釜山で行われるが、釜山は韓国代表チームにいた当時、釜山市庁に所属し生活していたので、とても愛着がある。大会で韓日両国の人に応援してもらえたらうれしい」
アジア大会に続いてアテネ五輪を目指し、現役を引退した後は柔道の指導者になりたいと考えている。
「日本は練習は科学的だが精神力が弱い面がある。韓国は気迫がすごい。両国での経験を将来生かしたい」
在日の後輩に対しては、「広い世界を見て勉強してほしい。スポーツ選手に国籍の問題は存在するが、信じる道を歩んでほしい。子どもたちが自分の試合を見て、柔道に魅力を感じてもらえたらうれしい」と話す。
韓国は釜山アジア大会に向け、空手選手の育成・強化を図り、3月に「空手道第1回総裁旗 全国選手権および2002年国家代表選抜戦」を開催した。
安健太(アン・ゴンテ)選手は「一般男子 個人 形」の部門で見事優勝。最終選考は7月に行われるが、安選手は国家代表選手へ向けて大きく前進したことになる。
「韓国語が出来ないので選考会では苦労したが、試合では実力を出せたと思う。韓国は(日本よりは低いが)空手の実力があるので、勝てたことはうれしい。選ばれたら国家代表として恥ずかしくない試合をしたい」
1978年、大阪生まれの在日3世。小学生のころは「林派系東流」で空手を習う。滋賀医科大学入学後、医者になるための勉強のかたわら、空手にも本格的に取り組み始め、大学の流派「和道会」に打ち込む。
2000年の和道会全国大会でベスト16、2001年度団体組手で3位に入賞している。現在は大学5年生だ。
「空手はとてもすばらしいスポーツ。『組手』で相手と対戦することも、『形』で人に出来ない動きをすることも、どちらもやりがいがある。韓国の大会に出場する中で、韓国人であることを実感した。空手の魅力、韓国人としての自覚を今後も大切にしたい」。