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2002/02/08

<在日社会>「在日銀行」への道 3

 経営破たんした関西興銀で、李煕健・元会長親子が逮捕されるなど不正が暴かれているが、捜査当局は7000億円を超える不良債権の経緯についても本格調査する方針だという。貸出金が相次いで焦げ付いて経営破たんの原因になっただけに、関係者の間には緊張が走っている。

 今回の近畿産業信用組合への事業譲渡契約によると、関西興銀の貸出金など資産9525億円のうち実に8割近い7484億円がRCC(整理回収機構)に譲渡される。つまり、これが不良債権の額だが、債務者側からみると、RCC行きになると厳しい返済を迫られることになる。

 債権回収事情に詳しい筋は、「RCC送りになれば、その債務者は破産を免れない場合が少なくない。まず不動産などの担保は処分しなければならない。しかし、担保価値は下落しているため、不足分の返済計画を立てなければならないが、現実性があると認められないと手をあげるしかない。自己破産して惨めな人生をおくらなくてすむように、必死にRCC行きを免れようとする動きが過去に何度もあった」と説明した。

 関西興銀の場合、7484億円がRCC行きだが、これには「債務者の状況の変化等によって修正されることがある」との但し書きがある。つまり、関西興銀の管財人はRCC行きと決めたが、最終的な決定権は譲受先の近畿産業にあり、どれだけの不良債権がRCC行きを免れるのかが注目点だ。

 大阪の在日経済人は、「論功行賞だな。一説には40人ともいうが、関西興銀どころか京都商銀のお土産つきで譲渡させるのに功労のあった人とは、引き続き取引することになるのではないか。数十億から100億円以上借りている人もいるという。当然、RCCに行かせず引き受ければ、その分、経営負担になる」と述べた。

 これは、東京商銀の事業譲受に成功した北東商銀や熊本商銀にも大なり小なり当てはまることだろう。
東京商銀の破たんで出資金が消えた年配の在日同胞からは、「昨年11月、事業譲渡で在日の分裂というか、主導権争いをさらけ出す入札という事態になったが、その背後で論功行賞の人たちが動いていた。必死になって、一方に肩入れしている姿に妙なものを感じたものだ。もし管財人側でRCC行きとした債権を、譲受側が継続取引に変更した場合は、その理由と金額、氏名を発表してほしい。少なくとも1億円以上はそうしてほしい」との強い要望があった。

 いま、信用組合を含め金融機関は「ディスクロージャー誌」と呼ばれる公開資料の作成を義務付けられている。自己資本比率、破たん先債権、延滞債権、3ヵ月以上延滞債権、貸出条件緩和債権に分類されたリスク管理債権などが記載されている。その金融機関の健全性をはかる重要な物指しだが、この同胞の訴えを考慮すれば、情報開示ももっと踏み込む必要がありそうだ。信用を失墜した信用組合の再生のため、経営透明性はもう避けて通れない。

 「物事はなんでもそうだが、得する人と損する人がいるという。今回の一連の事態をみると、出資金をとられて泣いている人がいる一方で、焦げ付きのまま取引できるとほっとしている者がいる」という破たんした信組に出資している在日経済人の怒りの声が在日社会にある。また、「何とも不思議なことだ。民団や商銀の幹部で原因究明と責任追及の動きがない」という不満の声があることをことを決して軽く考えてはならないだろう。