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2002/01/01

<在日社会>「ドラゴン銀行」挫折の危機

 関西興銀、東京商銀、京都商銀、福岡商銀など破たんした在日韓国人信用組合協会加盟の4信組の受け皿として設立が進められてきた「ドラゴン銀行」構想が挫折の危機にある。

 昨年末に金融庁と預金保険機構は入札にかかっていた4信組の事業譲渡について、「ドラゴン銀行」を受け皿にするのは困難と判断したもようだ。金融当局は、問題点として2点挙げているという。

 一つは、受け皿を選ぶ入札でドラゴン銀行が提示した条件では他の信組よりも国民負担が重くなる。

 もう一つは、在日社会がドラゴン銀行でまとまらず受け皿に既存信組が続々名乗りをあげ、特に関西ではドラゴン銀行への譲渡を嫌がる動きが強くあった。最終的にはこれらがドラゴン側の不利に働いたようだ。

 韓国紙もこの問題には関心が高く、「ドラゴン銀行が受け皿としての優先交渉対象から外され、韓国政府主導で推進されてきた在日同胞の新統合銀行設立が、政府の未熟な対日交渉と同胞社会の分裂などで事実上挫折した」などと報じた。

 だが、在日識者の間には、「最近の東京商銀の不正事件や朝銀問題に端を発する総連本部への家宅捜索などで、公的資金を投入するのはおかしいという世論がつくられ、在日に銀行をつくらせたくないという自民党保守政治家らの発言力が強まったのではないか」という指摘もなされている。

 これにより、関西興銀は競合入札した近畿産業信用組合が優先交渉対象となった。京都商銀は近畿信組と北陸商銀の争いとなり、東京商銀も北東商銀と横浜商銀が交渉権を握ることになった。福岡商銀は熊本商銀が優先交渉対象だ。

 だが、これは始まりにすぎないという見方もある。ドラゴン銀行関係者は「管財人との交渉で増資などの点がクリアされれば、受け皿として決定されるだろうが、条件を満たさなければ交渉権は移り、ドラゴンにも“敗者復活”の機会がある」と述べ、「ドラゴン側が入札で提示額が低かったのは厳しく査定したからで、金額にまかせて引き受けるようなことはしなかった」と明らかにした。

 経済・金融業界はいま淘汰の時代であり、信組は続々整理されていっている。

 「信組の母船となる在日の銀行が必要だ」という意見は圧倒的に多いが、今回を逃しては在日の銀行は当分望めない。そんな皮肉な結果になるのだろうか。