永住外国人に住民投票権を認める自治体が、これまでに全国31カ所に拡大している。常設型の投票条例に盛り込む自治体も出ており、この動きは今後、さらに加速すると見られる。
永住外国人に住民投票権を認めたのは、合併問題の是非を問いかけた2002年1月の滋賀県米原町が最初である。
県職員時代に公務員採用資格の国籍条項撤廃問題に取り組んだ西村俊雄町長が、「永住外国人にも連帯意識を持って意欲的にまちづくりに参加してもらうことが大切」との信念で、町議会を説得した。
その後、多くの自治体が合併問題に揺れる中、住民自治の観点で永住外国人に住民投票を認めようとする自治体が増えていった。総務省によると、現在までに住民投票を認めたのは、全国で31カ所になる。(別表参照)
また単発の出来事ごとに住民投票を導入するのではなく、常設型の住民投票条例を導入する動きも出てきた。2002年6月の愛知県高浜市が最初に決定し、その後、岡山県勝央町、岡山県哲西町、埼玉県富士見市、広島県広島市が同じように常設型住民投票条例案で永住外国人にも投票権を認めている。
このうち広島市の場合は今年3月19日、政令市としては初めて、市政の重要課題について18歳以上の永住外国人に投票権と直接投票権を認める常設型住民投票条例案を可決した。
埼玉県富士見市の場合は直接請求権を除外して、18歳以上で登録を済ませた永住外国人に投票権のみを認める方式をとっている。
そして都内では杉並区が初めて、永住外国人の住民投票を認定した「杉並区自治基本条例」を5月1日に施行することを決めた。この条例は18歳以上の永住外国人に認められたもので、区内に引き続き3カ月以上住所を有し、あらかじめ住民投票資格者名簿に登録していることが必要になる。
さらに住民投票とは別に、鳥取県が知事の諮問機関として「日野郡民会議」を設置して永住外国人の参加を求めたように、地域活性化のための自治体独自の組織づくりに永住外国人の参加を要請する動きも出て来ており、今後の動向が注目される。