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2003/11/14

<在日社会>地域の在日史をコツコツ

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    多数の朝鮮人労働者が建設に関わった広野ゴルフ場

 兵庫県と朝鮮に関する歴史を調査研究している在日2、3世の研究グループ「兵庫朝鮮関係研究会」(兵朝研)が、83年11月の発足から今月で20周年を迎える。「自己の歴史を知ることは、日本でアイデンティティーを確認して生きるために必要」との思いで、長年運動を続けてきた。

 「日本の小学校に通っていたとき、"朝鮮帰れ"と言われたことがあるが、何故差別を受けなければならないのか納得出来なかった。そして自分の子どもが小学校に上がる年になったとき、子どもに在日の歴史をきちんと伝えることが在日としての自覚を持ってもらうために必要だと思った。そのためには自分が住む兵庫の町と在日の関わりを正しく知っておく必要があると考えたことが、兵朝研を設立するきっかけとなった」

 兵朝研設立メンバーの1人で、現在会の代表を務める徐根植さん(53)は、こう語る。

 同会が結成されたのは1983年11月13日。徐根植氏ら3人の在日同胞が集まって結成した。在日同胞が自分たちの歴史を知り、アイデンティティを確認して日本で生きていくための糧にすることと並行して、日本の人々に在日の歴史的立場を伝えて友好関係を築く一助になればとの思いからスタートした。

 地元兵庫の在日の歴史を調査研究し、それを記録に残す地道な活動に取り組んできた。会結成3年後の86年から会報を発行し、現在までに106号を発行。また研究発表を行う例会は8月をのぞき年11回開催し、これまでに218回を数える。

 その研究成果をまとめた出版活動にも積極的に取り組んできた。最初に出版したのは会結成から2年後の85年12月で、自費出版による『兵庫と朝鮮人』、その後87年には『鉱山と朝鮮人強制連行』、90年7月に『地下工場と朝鮮人強制連行』(どちらも明石書店)、そして93年12月に神戸学生青年センター出版部から『在日朝鮮人90年の軌跡-続兵庫と朝鮮人』と、これまでに4冊を出している。

 日本の「韓国併合」以前の在日の生活、強制連行関係、植民地下の兵庫における在日の生活を丹念に調査したもので、地元を中心に評判を呼んだ。

 そして今回、20周年を記念して10年ぶりに出す本が、『近代の朝鮮と兵庫』(明石書店)だ。この10年の間にメンバーの入れ替わりもあり、新しい若手メンバーの研究成果などをまとめている。

 レポートの一つ「広野ゴルフ場と朝鮮人-神戸財界人と朝鮮人労働者」はメンバーの高東元さんが、日本が誇る名門ゴルフ場である広野ゴルフ場が1932年に作られたとき、低賃金の朝鮮人労働者が多数駆り出されたこと、太平洋戦争中、同ゴルフ場を陸軍滑走路にする計画が持ち上がり、工事が行われたが、その時も朝鮮人労働者が多数動員されたこと(工事中に敗戦を迎えた)、などを調査、紹介している。

 また戦後、工事に動員された朝鮮人がクラブハウスを朝鮮人学校として貸与してほしいとゴルフ場経営者に申し入れたが、経営者側はことわった事件など、神戸の財界人の植民地支配への関わりと共に広野ゴルフ場と朝鮮人の関係が明らかにされている。会の連絡先は ℡06・6499・3449(徐根植)。

◆ 徐根植・兵朝研代表の話

 自らの歴史を自ら知ろうとの思いで勉強してきたことが、会を継続してきた原動力だ。仕事をしながらの活動は大変だが、全員の情熱で補ってきた。

 最近も石原都知事の植民地支配を肯定するかのような問題発言があったが、そういう差別的発言に精神的、理論的に立ち向かうためにも、日本と朝鮮半島の歴史を明らかにしておく必要がある。

 世代交代も進めながら会を継続し、歴史を掘り起こし続けたい。

 関心ある同胞の方は、ぜひ会に参加してもらえればと思う。