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2003/07/25

<在日社会>韓国ドラマ日本で大人気 身近な隣国再発見

  • zainichi_030725.jpg

    22日に始まった韓国ドラマ『ロマンス』 (c)MBCプロダクション/コリア・エンターテインメント 東京MXテレビで火曜夜10時放送中

 “韓国ブーム”のきっかけともなった『シュリ』の上映から3年。2002年の韓日共催ワールドカップ(W杯)大会を経て、韓国人気は新しい段階に入ったといえそうだ。最近、韓国テレビドラマが日本、そして在日の女性層を中心に大人気となっており、俳優を訪ねるツアーも好評だ。22日には新しい韓国ドラマ『ロマンス』(東京MXテレビ)の放送も始まった。

 韓国のドラマが専門チャンネル以外で放送されはじめたのは、W杯開催直前のこと。地上波では東京MXテレビが初めて『オータムインマイハート』(原題:秋の童話)を、同時期にBS日テレほかが放映した。これに続き、各地方局やテレビ朝日、NHKが韓国ドラマの放映を始めた。

 「出演している俳優がとても純粋な感じ」、「表現の豊かさに驚いた」、「身近な隣国を発見した」・・・など反応はさまざまだ。

 東京MXテレビで韓国ドラマの編成を担当する金慶子さんは、「韓国映画が注目され、ますますエンタテインメント分野での交流が進むなか、中国圏ですでにブームを起こしていた韓国ドラマの需要は高まると思った。放送への反響は大きく、問い合わせなどが3カ月で3000件以上にのぼったことは想像以上」と話す。

 『イブのすべて』を放送したテレビ朝日の広報担当は、「深夜のドラマ枠で、海外ドラマとしては異例の視聴率だった」とのコメント。現在、NHK衛星第2で放映中の『冬のソナタ』も、関係者の予想を上回る反響をよんでいる。

 ドラマの原訳本(NHK出版)は初版2万部弱(上・下巻合わせ)でスタートしたが、約2カ月で23万部が増刷された。「こんなことは初めて」と、出版スタッフも驚きを隠せない。

 『韓国はドラマチック エンターテイメントでみる韓国スタイル』(東洋経済新報社)などの著者がある田代親世さんは、次のように語る。

 「韓国に色濃く残る儒教思想が、家族関係、男女の恋愛・結婚観など日常生活に反映され、今の日本が忘れてしまったものを見る、という面でなつかしさを感じたりもすると思う。ドラマはその国の日常生活や習慣がよくわかる。顔や習慣が似ているのに、日本とはまったく違うものが描かれ、その違いに興味を持つ人が増えてきたのだと思う」

 在日の人たちにも、韓国ドラマは評判を呼んでいる。ある在日3世の女性(27、会社員)は、「韓国留学中、言葉や習慣を覚えるためにテレビドラマを必死に見た。日本で見ていて、韓国人の情の熱い人柄や、よく過ごした屋台など、留学時代が懐かしく思い出される。これからも放映を増やしてほしい」と話す。

 在日2世の40代の主婦は、「韓国語を聞きながら日本語字幕で見れるのがうれしかった。日本で生活しながら祖国を知ることができる時代がきた」とうれしそうに語る。

 旅行代理店が企画する映画やテレビのロケ地巡りツアーも人気をよび、企画が後を絶たない。5月に大手旅行代理店などが企画した韓国ツアーに応募が殺到、日本全国から約300人が参加した。

 人気に応え近畿日本ツーリストはこのほど、『冬のソナタ』のロケ地をめぐる70人規模の3泊4日のツアーを発売した。8月27日から30日の日程で、ロケ地の竜平や春川を訪ねるもので、現地でドラマの解説も行われる。韓国ドラマのロケ地を訪ねるツアー人気は、今後も続きそうだ。


 ◆韓国スターを取材してきたディレクターの佐藤直子さんの話

 「いま韓国ドラマにハマった人たちは、『出演する俳優が大好き。彼と同じ言葉で話したい』だったり『女優のファッションやメイクを取り入れたい』、『生活習慣や考え方の違いがわかって興味が出てきた』だったり『映像に出てくる美しい風景のなかを歩きたい』など、韓国に対してポジティヴな見方を持っている。

 日韓の歴史問題や政治家たちの妄言、南北問題などから見えてくる韓国とはまったく違った韓国に魅せられた人たちだと思う。自分の興味・関心を持って韓国に行き、一方的な情報に惑わされることもない、一過性のブームとは違う根強いものを感じる。これからは日常に密着した幅広い日韓交流が進んでいくのではないだろうか」