日本の若手弁護士でつくる「在日コリアンの子どもたちに対する嫌がらせを許さない若手弁護士の会」が、北朝鮮による日本人拉致事件が明らかになった後、朝鮮学校に通う在日の子どもたちがどんな嫌がらせを受けたか調査した「在日コリアンの子どもたちに対する嫌がらせ実態 調査報告集」を発表した。朝鮮学校に通う子どもたちの5人に1人が嫌がらせを受けており、深刻な人権侵害が浮き彫りにされた。
会を結成したのは、2002年10月に弁護士登録をし、東京、埼玉、神奈川の各弁護士会に所属している新人弁護士14人。2002年9月17日の朝日首脳会談で北朝鮮が日本人拉致の事実を認めて以後、在日コリアンの子どもたち(特に朝鮮学校に通う子どもたち)に対する暴行、暴言などの嫌がらせが頻発している状況を憂慮し、嫌がらせの実態調査に取り組んだものだ。
2002年11月15日に会を結成し、朝鮮学校に嫌がらせ被害の実態調査を申し入れ、11月30日から関東の各学校を回ってアンケート調査を開始した。21校、2710人の児童・生徒に対して行われた。
その結果、全回答者2710人中522人(19・3%)が被害にあっていた。これは約5人に1人になる。男女別に見ると男子生徒が1393人中196人(14・1%)、女子学生1317人中326人(24・8%)が被害にあっている。女子生徒の約4人に1人が被害にあっていることになる。内訳をみると男子生徒は小学校低学年ほど被害が多く、弱いものいじめの要素が見受けられる。
女子生徒を見ると、民族衣装のチマチョゴリを着用している中学生、高校生が一番被害にあっている。チマチョゴリを着用していたときに被害にあったという女子生徒の割合は、何と47・6%にのぼる。
嫌がらせの内容を見ると、言葉による暴力が圧倒的に多く、全被害の76・6%になる。「北朝鮮大嫌い」「拉致ってんじゃねえよ」「おまえら北に帰れ。おまえら拉致するぞ」など、拉致という言葉を使った嫌がらせが目立つ。
また頭をこづかれたり、ランドセルを引張られた、蹴られた、チョゴリを切られた、階段で突き飛ばされたなどの暴行を受けた例や、自転車で追いかけられたなどのストーカー的な嫌がらせもあった。
「日本が過去に行った行為(植民地支配)も思い起こしてほしい」「(日本の)マスコミに問題がある」と北に対する過剰報道への批判、「拉致はひどいこと」と拉致事件への怒りも見られた。
子供たちは嫌がらせに対して「怒りを感じる」「在日コリアンと事件は無関係なのに」などと語る一方で、「一部の人がすることで、日本人みんなが悪いとは思っていない」「私のまわりの日本人はいい人が多い」と話し、今後の問題として日本政府に対しては、「在日コリアンや朝鮮学校を差別しないでほしい」と、民族差別や朝鮮学校の国立大学受験資格が認められていないことへの是正を求めている。
最後に日本人に望む事として、「嫌がらせを止めてほしい」「朝鮮人のことやその歴史を理解してほしい」とした上で、「これから仲良くなる関係をつくりたい」と交流に希望を見出す意見が数多く見られた。
同会の濱野泰嘉弁護士(29)は、「子どもたちの率直な声を貴重な証言として、今後は在日コリアンへの嫌がらせ防止を含む在日外国人全体への偏見を無くす行動、また子どもたちから多く寄せられた朝鮮学校卒業生の国立大学受験資格の問題にも取り組んで行きたい。」と語った。パンフは900円。希望者は℡03・3354・9680へ