全国各地の在日本大韓民国民団(金宰淑・中央団長)で行われていた地方委員会と大会が、ほとんど終わった。今回の特徴は、財政再建をどの民団地方本部も最大のテーマとしていることで、支部の統廃合を打ち出した地方本部もあった。組織改革、財政改革に本腰を入れて取り組まないと、民団を維持できない状況が押し寄せている。
いま、民団の地方本部は深刻な財政問題を抱えている。旅券業務が民団を通さなくても出来るようになったことで、手数料収入が減ったことは以前から指摘されていたが、この間日本経済の厳しい状況が続く中、団費収入も減っている。団員からの徴収がままならないのに加え、団費の値下げを要求する団員も増えている。
全国最大の同胞密集地の大阪でさえも、それらの問題に直面しており、委員会では支部の統廃合が方針として確認された。大阪でも最も同胞数が多い生野地区の西、北、東の3支部統合が建議され、承認された。生野区といえば、在日の数が少ない地方本部よりも同胞数が多い最有力支部だが、そういう支部でも統廃合を進めないと維持できない状況になったのである。
同じように同胞数が多い兵庫県地方本部の大会でも、財政の建て直しを主張した白永熙氏が団長に選出されている。
神奈川の大会でも財政問題が議題にのぼり、団費の激減に伴い、各支部の割当金が大幅に落ち込んでいる現状が報告された。
金洪斤・元団長が、「中央本部は韓国政府の支援金のうち年間4億5000万円を使っているが、地方本部の塗炭の苦しみをわかっているのだろうか」と述べたうえで、「民団は今後、完全なボランティア団体としてはどうか。決められた予算の範囲内で仕事をすべきだ」と提唱すると、大きな拍手が起きる一幕もあった。
神奈川本部は今後、現在の9支部体制の見直しを含む、組織の統合・再編成を検討していく。また財政基盤確立のための事業として、「MINDAN医療保険」の加入者募集、同胞向け霊園紹介事業などを行っていくことも確認している。
財政問題の次に深刻な課題とされるのが人材不足である。兵庫県の大会では議長と監察委員長のなり手がなく、選考委員会が15日までに適任者を推薦、選定することになった。大阪の大会では支団長の3選禁止条項の解除が案件として出され、中央本部に上程案件とされている。また、全国どの大会でも高齢化が目立っていた。自立財政の確立、人材育成、組織の若返りに相当な危機感を持って臨まないといけない時期に来たことを物語っている。5月には全国の民団支部総大会が一斉に行われるが、団員の厳しい判断がありそうだ。
◆神奈川地方本部
民団神奈川県本部の第44回定期地方大会は4月26日に開かれ、新3機関長が誕生した。団長には単独候補の殷鍾七氏(75)が無投票で選ばれた。監察委員長も金次永氏(62)が無投票当選。唯一選挙となった議長には94票を獲得した尹隆道氏(60)が選出された。 殷新団長は、「厳しい時代なので緊張している。財政問題が大変なので、まずこれを解決して事業を展開していきたい」とあいさつした。
◆大阪地方本部
民団大阪地方本部の第49回定期地方委員会、第52回定期地方大会は4月26日に開かれ、2002年度活動報告と決算報告、2003年度活動方針案と予算案が審議された。また民団生野の西、北、東の3支部統合が建議され、承認された。支団長の3選禁止条項の解除も出されたが、中央本部に上程案件とされた。
この後、3機関長選挙が行われ、現職の金昌植氏(65)が尹鍾憲氏(65)を257票対225票(総投票数483、無効1)で破り再選された。議長には李龍権氏(62)、監察委員長には金漢翊氏が無投票選出された。
金団長は、「民団の改革と組織の再編をはかり、福祉センター建設は必ず成し遂げる」との決意表明をした。
◆兵庫地方本部
兵庫県地方本部の団長選挙は4月27日、神戸市の同本部で行われ、白永煕氏が155票を獲得して新団長に当選した。
議長と監察委員長への立候補者がなく、選管は選考委員会(成樂三委員長)を発足し、15日までに適任者を推薦、選定する。