韓半島全土で古くからうたわれてきた民謡で、世界的にも有名な「アリラン」。しかし、南北分断以後、「アリラン」は南北で独自に歌い継がれて現在に至っている。在日2世の李チョルウ氏が設立して代表を務めるKAC(コリア・アーツ・センター)は、創立15周年を記念してCDアルバム「北と南ののアリラン伝説~アリランのルーツを訪ねて~」を発売、在日社会と日本社会に「アリラン」のすばらしさを伝えようとしている。
韓半島に数多く残る民謡の中でも、アリランはもっとも愛された歌として知られている。3・3・4調、3・3・5調の基本旋律を軸に作られているが、地域によって違っており、旋律は100以上、歌詞は3000種以上にもなるといわれている。
アリランの名前も諸説がある。古代、水を求めて河川に定住した人々が、阿利那(アリラ)=長い水の意=の文化を生み、それが民族の信仰と文化となって発展し、「アリラン」の民謡となって伝わった。または朝鮮朝時代、景福宮の工事に連れてこられた民衆が故郷の家族(娘)をしのんで「我離娘」とうたったという話などだ。
アリランは代々歌い継がれ、封建時代にはその苦しみをうたい、日本植民地時代には抵抗と解放の歌としてうたわれてきた。
今回のCDは、韓国の無形文化財・人間文化財と北朝鮮の功勲俳優・人民俳優ら南北の名唱たちによるアリラン全15曲を、1枚のCDアルバムに収録した価値あるもの。アリランの源流とも言われる江原道施善アリランを歌う金ナムギさんは、同地で生まれ育った農民で、現在、道指定無形文化財第1号に指定されている。
ポンファアリランをうたう金素姫さんは、韓国女流パンソリの最高名唱として知られている伝説の人。彼女の人生が近代から現代にいたる韓国伝統文化の足跡ともいわれている。83年に大韓民国文化芸術賞を受賞している。
「キーン(長い)アリラン」は、京畿地方発祥の民謡で別離をうたった歌。切々と歌い上げるゆっくりとしたメロディー、そして音の高低が激しい難曲を、平壌音楽大学を卒業後、民族芸術劇場の歌手を務める北の康応鏡さんがうたっている。
ほかにも、植民地の悲哀をテーマにした1925年の無声映画『アリラン』(羅雲奎)の主題歌としてうたわれ、爆発的に流行した〝アリラン、映画『風の丘を越えて』で有名な”珍道アリラン”など、話題の名盤を完全収録している。CDはこのほど、日本(キング・インターナショナル)と韓国(シンナラミュージック)で同時発売された。
李代表は、「将来、南北統一国家ができれば”アリラン”が国歌になるといわれている。昨年の釜山アジア大会でも南北同時行進にアリランが採用された。それほど愛されている歌だ。今後、南北交流がさらに進めば、アリランの重要性がますます高まるだろう。在日社会の音楽活動、芸術活動を活性化させようとの思いでKACを設立し、活動してきた。このCDを通して在日3、4の若者たちも民族の伝統文化を知ってほしい」と強調した。