在日韓国民団社会が役員改選シーズンを迎えた。特に、今年は中央本部が3年に1度の3機関長改選期に当たり、3月27日の大会に向けて選挙戦が始まっている。4月からは地方本部、5月には各支部で大会・総会が開かれ役員を改選する本部・支部も少なくない。婦人会、韓商、など傘下団体も人事の季節だ。また、信用組合も新しい人事体制を構築している。民団社会の各級指導者を選ぶ大事な時期であるが、これまで相応しくない人が役員についているとの声が少なからずあった。3年前の韓国国会議員選挙で「落選運動」がブームを起こしたが、民団社会でも「こんな人は役員に選んでほしくない」という声が強くある。本紙読者や一般団員から寄せられた声を集約してみた。
民団社会が停滞し、若者の民団離れが加速化しており、「民団の会合に行ったが老人ばかりだった」という声がよく聞かれる。若者離れだけが原因ではないだろう。民団社会を担っている幹部らの責任も大きい。
東京在住の70歳代の民団員は、「民団社会も半世紀を超え、大きな歴史的転換期に来ている。草創期には情熱に燃えて奉仕活動に取り組んでいた。だが、いまは高齢化し、世代交代がうまくいっていない。とにかく今の民団には昔のような活力が感じられない。指導者の選び方にも大きな問題があるが、組織を活性化できる人を選ばなければならない。例えば、活性化できる若い有能な人材を抜擢、大胆に権限を与えるようなビジョンがなければならない」と語った。
では、どんな人が民族団体・機関の役職に相応しくない人なのか。埼玉商銀が破たんして出資金が紙屑になった埼玉県在住の60代の同胞男性は、「私個人としてはもう2度と損害を見たくない。5000万円以上の不良債務者には役職から退いてほしい。そういう人は、在日全体に損害と迷惑をかけた人であり、公的団体を指導する資格もない」と問題提起した。
同様な意見は少なくない。朝鮮建国促進青年同盟(民団創立母体)時代から運動をしてきた関西在住の高齢の男性も、「われわれ在日の信用組合から多額の融資を受けて返済が滞っている人には民団、韓商、婦人会など民族団体の役職に就いてほしくない。返済できるよう事業に専念すべきではないか」と語った。
東京在住の40代の団員からは、「民団の役職を利権の場と考え違いしてもらっては困る。こういう人を一掃しないことには民団の再生はない」と厳しい批判の声もあった。
韓国政府からも年間7~8億円ほどの資金支援があるようだが、民族団体の財政運営は旧態依然であり、改革が迫られている。
大阪在住の民団役員経験者は、「本国に援助金を求めて予算化する指導者には去ってほしい。民団創団精神は自立であったはずだ。在日同胞自らの力で全国各地に民団を組織化し、学校も建て信用組合もつくった。誰の手も借りなかった。本国政府が援助するのが当たり前と考えること自体おかしい」と指摘、「自立運営に徹してほしい。それも無理なら縮小・リストラもやむを得ないのではないか」と述べた。
埼玉在住の50代サラリーマンは、「民団では確か支部の統廃合の方針も出たと聞いている。だが、どうも具体化されていないようだ。いま日本社会は、企業も銀行も市町村も大合併の嵐が吹いている大変な時代だ。民団ももっと思い切って改革し、贅肉を削ぎ落とせば必要予算も大きく減らせるはずだ。旧態依然とした考えの人にはリーダーになってほしくない」と強調した。
民団東京の元支団長は、「私は小さな会社の社長だが、支団長になって支部財政建て直しのためいろいろやった。給料だけ多い事務部長もリストラした。それでこれまでの支部財政の3分の1を削った。その結果、不都合はなにもなかった。企業経営では当たり前のことだ。やろうと思えばなんでもできる。やる気があるかないかの違いだ」と語った。
本紙読者からは、「大改革をしなければならない。自立できるように組織の改革が必要だ。個人企業同様に団体も生産性をあげるよう努力しなければならない」との声が少なくなかった。
民団社会を閉鎖集団だという人もいたが、民族団体・機関での人事の公正・厳正さに疑問を提起する人が多い。関西の民団社会に精通した団員は、「民団であれ婦人会、信用組合、韓商であれトップになれば執行役員を指名する権限があるが、公的機関では少なくとも6等身以内の親近者は指名しないでほしい。役職に親子、兄弟、夫婦など親族を任命し、公私混同して組織を私物化することを許してはいけない。経営破たんした大阪興銀や東京商銀の例をみるまでもなく、親近者が入ることでおかしくなったケースは山ほどある」と指摘、「これからは公私混同しない人、個人の利益に悪用しない人を選んでほしい」と訴えた。
このほかに、「あいつぐ信用組合の破産で出資金数百億円が紙屑になり多くの団員は泣いている。悪質者の逮捕や警察の取り調べも全国であったが、民団の監察機関は寛大なのか怠慢なのか、動きが団員には全く見えないと泣く失望団員がどれだけ沢山いることか」(60代主婦、東京)「組織団体役職員は公僕精神を発揮しなければならないのに、尊大な態度は不適任だ」(50代、男性)といった声も寄せられた。