京都の財団法人高麗美術館が今年、開館15周年を迎える。在日1世の実業家、故鄭詔文氏が朝鮮の文化を伝える為に私財を投じて建設したのが88年10月。以来、地域からの朝鮮文化発信地として貢献してきた。3月21日から開かれる「開館15周年記念春季展 色彩の枠 刺繍と絵画」を皮切りに、秋には15周年記念展覧会が予定されている。
京都で遊技業を営んでいた故鄭詔文氏が、市内の骨董店で見た李朝白磁に魅せられ、朝鮮の古美術の収集を始めたのは半世紀も前のことである。古美術品に「朝鮮の誇り」を見出し、集めた美術品を同胞に見せることで、差別されていた同胞達に朝鮮人としての誇りを取り戻してもらおうと思ったのである。
以来、高麗青磁、李朝白磁、民具、古墳の副葬品、美術品など約1700点を収集し、88年10月、京都市北区に高麗美術館を開館した。高麗と名付けたのは、高麗が朝鮮最初の統一王朝であることから、「北でも南でもない独特の空間としての美術館」としたいという鄭氏の意志を表現したものだ。
それから15年、高麗美術館は常設展示が120点、定期的に特別展を開き、年4回の会報も発行。朝鮮史を学ぶ地元の大学生や、全国の朝鮮学校の学生らが修学旅行で訪問する場にもなっており、年間約6000人が訪れている。
また研究講座も定期的に開き、古代日本と朝鮮半島を含む東アジア全体の交流史を研究している。考古美術史を調査・研究する高麗美術館研究所も向かいに建てられ、研究員らが、資料収集と収蔵品の管理にあたっている。この間、美術品の一部が盗まれる事件も経験した。
年会費1万円の維持会員は現在300人ほどいるが、美術品の保存には資金がかかり、慢性的な資金不足が悩みの種である。美術品の収蔵庫が離れたところにあるため、隣接地に移動させたいと願っているが、予算不足のために実現していない。
そして地域に定着したといっても、まだまだ知名度が低いこともネックになっている。
昨年のサッカーワールドカップ韓日共催大会開催時に、外務省から韓日国民交流年記念展示会の打診があったが、統一を願って『高麗』と名付けた美術館の立場から、ことわらざるを得なかったこともあった。
そのような中、15周年を成功させるために秋の展覧会では広報活動に力を入れる。特別予算を組んでチラシとポスターを大量に制作し、全国に配布する。維持会員も倍の600人をめざして募集運動を行っていく。2003年度研究講座もスタートする。そして10月25日には記念式典を計画だ。
研究員の片山真理子さんは、「W杯などで韓日交流が盛んになり、韓国に関心を持つ人が増えてきたので、それが古美術や古代史への関心にもつながってくれればと思う。故鄭詔文前理事長が朝鮮の誇りと統一への願いを込め収集した古美術品を、一人でも多くの人に見てもらいたい」と話す。
高麗美術館は、℡075-494-2238