「第57回(2002年)毎日映画コンクール」の各賞がこのほど決定。新宿梁山泊主宰の金守珍さんが『夜を賭けて』でスポニチグランプリ新人賞を受賞した。金守珍監督に話を聞いた。
公開前は北朝鮮問題が逆風にならないか、日本人を茶化した場面に批判がこないか、などの心配意見が周囲にあったが、それを乗り越えた受賞だと思う。
いままで在日映画というと差別や貧困の問題が出てくるので、暗くマイナーな存在と言われていた。そのイメージを吹き飛ばすような明るく元気な在日の映画を作りたかった。それが評価されたと思う。
製作のアートン、配給のシネカノンと、在日でなかったら出来なかった映画。今回の受賞は在日文化を発信していくエネルギーになるだろう。映画も公開劇場を拡大し、7月までのロングラン上映が決まった。
いま日本社会は元気がないといわれるが、日本が元気がないと在日も力がなくなる。在日が力を取り戻すことで、逆に日本社会に力を与えられればと思っている。
在日は逆境の中で、ケンチャナヨ(大丈夫)精神で生きてきた。日本社会がケンチャナヨ精神を持てば、活力を取り戻す一助になるはずだ。そのケンチャナヨ精神、一世のバイタリティを映画を通して在日や日本の若者に伝えたかった。
オーディション集まった一般公募4800人の中に在日の若者が1000人近くいた。彼らと話していて、いまだに本名を隠したり、差別の影に苦しんでいる青年がいることに驚いた。
在日が文化を発信できれば、堂々と生き、そして日本の人と明るい社会を築けるはずだ。そのためにも力の出る文化を発信していきたい。
続編を数年中に製作する計画だ。長崎の大村収容所に収容された義夫と、恋人の初子を中心に描く。
大村収容所の生活はもちろん、戦後日本の在日韓国人に対する排外政策、韓国・済州道で1948年に起きた民衆蜂起など、戦後の混乱も描くつもりだ。製作費も韓国、日本の映画会社などから広く集め、釜山に巨大なセットを作って撮影したいと考えている。期待してほしい。