韓国のお正月は、新暦よりも旧暦のほうで盛大に祝う。二〇〇三年の場合、旧正月は二月一日で、前日の一月三十一日と合わせて公休日となっている。
元旦には家族そろって晴れ着を着て、供物を並べた祭壇を前に、先祖供養の祭祀をとりおこなった後に、皆でお正月のご馳走を食べる。
このお正月料理に欠かせないのが、トックッ(餅スープ)。よく日本のお雑煮に例えられるが、見た目も味もかなり違う食べ物といえる。まず、餅が違う。トックッに入れる餅は「カレトッ」といって、うるち米の粉をこねて直径三センチほどの細長い棒状に延ばしたものを斜めに薄く切った、小判型の餅。もち米で搗いた日本の餅と違って延びることはなく、ぷつぷつと噛み切れる。サイズも小さいので、スープと一緒にスッカラッ(匙)ですくってパクパク食べられる。そして、食べても食べても下の方から湧き出てくるように大量の餅が入った、ボリュームたっぷりの料理なのだ。
スープも、昆布や鰹でさっぱりとダシをとる日本のお雑煮に対し、トックッは牛(骨やスジ、ブリスケ、テールなど)や鶏(ガラ、もも肉、丸鶏など)を長時間煮出してスープをとるので、塩や醤油で味をつけただけなのにとても濃厚な味わいだ。
具は葱、海苔、卵、煮からめた牛肉など、様々である。「トックッ何杯目を食べましたか」といえば「何才になりましたか」を意味する(韓国では数え年で年齢をいうので誰もが元旦に一才年をとる)ことからも、韓国のお正月料理の筆頭にあげられるトックッだが、やはり地方による違いはあるようだ。以北の平安道地方では「マンドゥクッ」といって、小麦粉の皮で肉などの具を包んだ特大餃子(マンドゥ)が入ったスープを元旦に食べるという。オモニが以北出身、という家のマンドゥクッを私も食べたことがあるが、手の平ほどのマンドゥはピロシキのように具だくさんで、ひとつでお腹一杯になった。
スープに餅とマンドゥの両方を入れた「トッマンドゥクッ」も韓国でよく食べられるが、お正月にこれを作る家もあるそうだ。この欲張りスープ、手間はかかるが、食いしん坊には是非おすすめしたい。
レシピは本紙新年号をご参照下さい。