在日韓国人信用組合協会(韓信協)からの退会宣言をした近畿産業信用組合(兪奉植会長、八田富夫理事長)が2日、大阪市天王寺区の本店会議室で韓信協脱会説明会を開いた。この席で近畿産業側は、脱会理由について、①本国支援金150億円を受け入れ運用するに際し、国債などで100%担保提供するのは合理性がない②韓信協分担金は高すぎる。事務経費を減らすなどして合理的な金額にすべきだ③韓信協で(多数決で)決めるのなら近畿産業信組は預金比率に見合う発言権があってしかるべきだ――などと説明した。これらの問題が解決されない限り脱会返上はあり得ないという立場を鮮明にしており、韓信協側の説得は困難を極めそうだ。
この日の説明会には、金昌植・民団大阪団長、白永煕・民団兵庫団長、車得龍・兵庫韓商会長、劉茂宣・大阪韓商会長代行、李貞烈・大阪婦人会会長ら近畿エリアの取引先など関係者約60人が参加し、同組合が7月20日に韓信協に脱会届けを出すに至った経緯の説明を受けた。
兪会長は「韓信協を脱会しても民族金融機関である事に変わりはない」と強調するとともに、韓信協の提示する傘下11組合で互助基金80億円を拠出して本国支援資金150億円を導入、各組合がその資金を運用する際には、同額の国債または定期預金を担保に新韓銀行に差し入れるという支援金スキームに反発。
「これは形式だけで(近畿産業は)応じられない。韓国政府は実質ある支援スキームを提供してほしい」と訴えた。
また20日の脱会届は、21日の韓信協の総会で多数決採決すると従わざるを得なくなるので、その前に出したと釈明した。また分担割当金に関しては「韓信協の職員3人で経費4300万円は高い。経費を切り詰めてほしい」と述べた。
質疑の中では「民族系同志、助け合って行くべきではないか」との問いに、兪会長は「ヘタをしたら共倒れになる。信用は利益が伴ってこそ。韓信協ではメシは食えません」と回答。また、脱会せず、近畿産業がリーダーになるべきではないかとの問いに、「韓信協改善のためいろいろ意見を言ってきたが、一向に改善されず、事務局が東京にあるためリーダーシップがとりにくい」と述べた。
さらに、本国支援金の取扱銀行をめぐって近畿産業はなぜ新韓銀行はいけないのかとの質問に、「新韓銀行以外の韓国系銀行にも打診し、条件のいいところを探すべきだ」と述べた。
参加者からは、「何とか元に戻ることはできないのか」と心配する声も聞かれたが、この日の説明会では近畿産業側の態度はよほどのことがない限り変わらないようにみえた。
近畿産業信組では、今回の脱会届の最大の理由として互助基金を通じた支援スキームをあげている。この互助基金は、2002年7月の韓信協総会で「在日韓国人信用組合協会互助基金」の名称で創設された。会員相互間の緊急資金源及び同年10月に韓国政府に緊急支援を要請した300億円の本国支援金に対する確実な償還を保証する手段の役割も担えるとの判断があった。
現在、近畿産業信組を除く10組合が割当金57億円を入金、在日韓国商工会も6日付で3億円を入金する予定だ。近畿産業は最も多い20億円を割り当てられているが、いまのところ入金する考えはない。
近畿産業関係者は、「国債など100%担保保証を提供するというのは、かつての両建て預金と同じではないか。もっと本国政府と粘り強く交渉し、各組合に実質的に役立つ支援金が必要だ」と反対理由を説明した。
韓国政府は、既存の本国支援基金400億円中、韓国銀行に償還せず、同基金の取り扱い銀行(外換銀行と新韓銀行)が預かったままになっている150億円を本国支援金として支援することを決定したが、この間100%の担保提供をめぐり交渉が難航したという経緯もあった。
結局、韓信協側がその支援資金を運用する際、100%担保提供も応じたのは、実際にはそのようなことは起きないとの想定による。来年4月のペイオフ完全解禁されるが、特例として、決済性の強い「無利子定期預金」に関しては全額保護されることが決まったからだ。会員組合ではその商品開発に入っており、本国支援金も同預金への預け入れを通じて解決されるのではないかとみている。
この点について、近畿産業側では、「当組合ではその無利子預金商品を開発した。だが楽観はできない。現在は本国支援金150億円の話だが、300億円支援金の話もある。組合にとって本当に役立つ支援スキームであるかどうかが鍵だと思う」などと韓信協の運営に不満を述べた。