10代の在日韓国人女性が活躍している。バレリーナの崔由姫さん(19、チェ・ユヒ)(写真・上)、バイオリニストの梁美沙さん(17、ヤン・ミサ)(写真・中)、そして女優兼モデルの中学生、韓英恵さん(13、カン・ハナエ)(写真・下)の3人だ。3人とも世界に羽ばたきたいという大きな夢を持っている。
8月中旬、東京と大阪で開かれる「ローザンヌ国際バレエコンクール日本開催15周年ローザンヌガラ」に出演するのが、北九州市出身の在日4世・崔由姫さんである。
バレエを始めたのは5歳の時。朝鮮学校に通いながらバレエを学び続け、第30回ローザンヌ国際バレエコンクールに出場、世界の一流バレエ団で1年間研修が出来る「プロ研修賞」を見事受賞した。
そして2002年9月から単身渡英し、英国ロイヤルバレエ団で研修を受ける。昨年9月の研修終了後は同バレエ団に入団、プロのバレリーナとしてのスタートを切った。まだコールドダンサー(バックダンサー)だが、踊りは高い評価を受けており、将来が期待される存在だ。
「素晴らしい先輩がバレエ団には数多くいるので、出来るだけ多くを吸収し、テクニックと表現力を身に付けたい。8月のローザンヌガラはプロとして初めて日本で踊るので、成長した姿を見せたい。在日コリアンとしての誇りを胸に世界で活躍したい。個性的で何でも踊れるバレリーナが目標」
バイオリニストの梁さんは大阪在住の高校3年生。3歳でバイオリンを習い、12歳の時に初のリサイタルを京都で開いた経験を持つ。13歳の時には英国で開かれた「ユーディ・メニューインバイオリン」で優勝している。その後、日本の主要オーケストラと次々に共演を重ね、高い評価を得ている。
昨年はチェコで開催された国際音楽祭ヤング・プラハに招待され、オープニングコンサートでスーク室内管弦楽団とチャイコフスキーのバイオリン協奏曲を演奏し、チェコの音楽ファンから大きな拍手を受けた。
今年10月23日には神奈川県立音楽堂で開かれる「井上道義の上り坂コンサート 10代のモーツァルト」に出演し、バイオリン協奏曲第5番を披露する予定だ。
「モーツァルトはとても好きな曲。作曲家の意図を考え、当時の時代背景を出すように演奏したい。関東で弾くのは久しぶりなので楽しみ。全力を出したい」
相愛高校音楽科に在学中で、学業と両立させるため、演奏会は回数を制限している。現在ジャン・ジャック・カントロフ氏らに師事、高校卒業後はフランス留学を計画している。
「パリで2年間勉強し、その後はプロの音楽家として世界に羽ばたきたい。演奏会に来てくれた聴衆が幸せな気分で帰ってくれる演奏家になりたい」と話す。
韓英恵さんは90年生まれの中学1年生。父親がニューカマー(新規入国)の韓国人、母親が日本人の在日2世だ。2001年に鈴木清順監督の『ピストルオペラ』に少女・小夜子役に大抜擢された。
当時10歳だが、「あどけなさと年齢に似合わない妖艶さをあわせもち、その存在感と物怖じしない演技で鈴木清順監督の演出に応えた」と、映画関係者などから高い評価を得た。
最近はモデルとしても活躍する一方、カンヌ国際映画祭で主演男優賞を受賞した8月7日公開予定の是枝裕和監督『誰も知らない』にも出演。主人公の明と心を通わせる女子中学生役を演じ、独特の存在感を漂わせて映画ファンの注目を受けている。
プロの女優としての成長が期待されるが、本人は「小説家になりたい」とも話している。
「ローザンヌ・ガラ」は8月10、11日=東京・青山劇場、8月13日=大阪・NHK大阪ホールで開催。TEL03・3797・5678。
「井上道義の上り坂コンサート」は、10月23、24の両日、神奈川の神奈川県立音楽堂で。梁さんは23日に出演。問い合わせはTEL045・263・2255。
是枝裕和監督作品『誰も知らない』は、8月7日から全国公開。配給はシネカノン。