在日韓国人高齢者のための介護施設「アレック桜木」(足立区千住桜木町)がオープン半年を迎えて、施設を知ってもらうためのデイサービス体験を13日に行った。同施設は在日韓国民団東京本部足立支部会館の1階と3階に設けられ、同支部と協力して運営している。この日は区内の在日高齢者やその家族など100人が集まり、施設見学と交流を行った。
アレック桜木は、在日高齢者を対象に食事や入浴などのサービスを行う介護保健指定事業所である。人材派遣会社アレックの小林由憲社長(29)が、民団足立と契約を結び、民団足立の会館の1階と3階にデイサービスの施設を昨年11月オープンしたもの。1階は事務室と浴室などがあり、3階は食堂、機能回復訓練室、談話室などで構成されている。在日高齢者だけを対象にしたデイサービスの施設は珍しい。
デイサービスを行うスタッフ13人もみな在日2、3世で、韓国語の堪能な人もいるのでコミュニケーションに問題はない。食事も近くの韓国食品店と契約し、韓国料理を準備している。
朴有姫さん(85)は、「オープンからずっと来ている。ここで歌を歌ったり、仲間とおしゃべりをするのが楽しみ」と話す。
ヘルパーの在日3世、申和美さんは「在日は日本の人と違う歴史を持っているので、そういう話を聞くようにしている。日本の人と違って在日ははっきり発言するのでかえって気が楽。介護は1世にわかりにくい制度。東京都や足立区では韓国語のパンフもあるが、もっと申請を行いやすくする工夫が必要」と話す。
足立区には約9000人の在日韓国人が居住し、隣接する荒川区にも約7000人の在日韓国人が居住している。同施設の定員は30人で、稼働率50%(一日15人の利用)が採算ライン。しかしオープン間もないこと、在日社会全体に介護保健制度の認識が低いこともあって、現在の利用者は一日平均5~10人前後にとどまっている。
小林社長は、「在日専門のデイサービスはこれまでなかったので、事業性に注目して始めた。韓国友好にもつながると考えた。在日の人はは日本の高齢者に比べて元気な人と体調の悪い人の差が極端な印象がある。介護保険制度を受けるには役所の認定が必要だが、その申請手続きも行っているので、気軽に利用してほしい」と話す。
李団長は、「1世は介護保健制度に慣れていない。制度の有効活用を2、3世に伝えていきたい。足立区には高齢者だけの同胞家庭も700世帯ある。それらの家庭を個別訪問して、介護保健制度の説明などをしている。ひとり暮らしの人もいるので、アレックで韓国の食事を楽しんでもらえればと思う。無年金高齢者の問題も区議会に申し立てしている」と語る。
高齢者問題が在日社会にとって大切な課題となる中、民団足立とアレック桜木の試みは重要なテストケースとして注目される。