「ヨンさま」こと、ペ・ヨンジュンさん(31)の初来日は、今月3日から「冬のソナタ」の再放送が開始されこともあって、日本全国に再び「冬ソナシンドローム」を巻き起こしている。「冬のソナタ」のDVDや主題曲のCDは飛ぶように売れ、ドラマを見た女性たちの間で韓国語学習熱も盛んだ。なぜこれほどまでに「冬ソナ」は女性たちを引きつけるのか。その魅力のなぞを探る。
前日のお花見日和から一転して肌を刺す冷たい雨となった4日午後1時、東京・渋谷の渋谷公会堂では4000人の女性ファンが、「ヨンさま」の姿を待ち受けていた。3時開演のファンイベントに参加できるは2000人。残りの女性たちは、ペ・ヨンジュンさんの写真をかかげ、到着を待ちながら「ヨンさま」「ヨンジュン氏」と叫ぶ。中年女性が必死に「チケット譲ってください」と哀願する姿もみられた。寒空の中、ここだけは一種異様な熱気が渦巻いていた。
前日の羽田空港にも、出迎えのファン約5000人が殺到し、気分が悪くなった女性が救急車で運ばれる騒ぎもあり、「ヨンさま」人気はすさまじい。あの映画「タイタニック」のディカプリオでさえ来日した際の出迎え客は1000人だった。
ファンイベントの会場は、赤、青、黄色などカラフルな洋服でびっしり埋まり、どこもかしこも女性ばかり。30代、40代が多く、60代も珍しくない。「ほほえみの貴公子」が、さわやかな白のジャケット姿で現れ、「みなさんと会える日を楽しみに待っていました」と日本語で語りかけると、会場は興奮のるつぼと化した。まるで、アイドル歌手のコンサートにでも迷い込んだような雰囲気だった。
なぜ、これほどまでに女性たちは「ヨンさま」に熱中するのか。この日のために静岡からやってきたという主婦(65歳)は、「物腰がやわらかく、誠実な人柄がにじみ出ていて、人間としてすばらしい」と絶賛する。
ファンへのサービス精神も並みではない。来日直前にインフルエンザで体調を崩し、この日のイベントには点滴を打ちながら臨んだ。ファンを家族と呼び、「みなさんの顔が見たいので照明を明るくしてほしい」と要望。韓国、台湾、香港などから駆けつけたファンを紹介し、「日本のみなさん、仲良くしてください」と、気配りを忘れない。
花束やプレゼントを渡すファン代表の女性を抱擁するなど、ファンの心をくすぐり、「彼女はいますか」との質問に、「映画監督をめざしている人です」と答えるなど、誠実な対応も好感をもたれる原因のようだ。
「冬ソナ」ファンは圧倒的に中年女性が多い。初恋をテーマに純粋でひたむきな純愛を描くドラマが、自身の青春時代を蘇らせ、美しい心を取り戻させてくれるからだ。
「冬ソナ」人気は、さまざまな分野で波及効果を生んでいる。原作本「冬のソナタ」は上下巻で100万部に迫る勢いで、公式ガイドブック(28万部)など関連書籍の売れ行きも好調だ。DVD(7巻)は15万セットも売れた。
さらに、韓国語熱が急速に高まり、語学学校の韓国語コースは主婦の受講者でにぎわっている。4月6日開講のNHK教育テレビ「ハングル講座」のテキスト(11万部発行)は全国の書店で売り切れが続出、急きょ20万部に増刷した。講座の中に「冬のソナタのセリフで覚える韓国語」コーナーがあるためだ。
「冬ソナ」を見て、韓国に関心を持ち、韓国を訪れたり、韓国の文化を学ぶ女性も増えている。イベント終了後、記者会見したペ・ヨンジュンさんは、「冬ソナ」で韓国ブームが起きていることについて、「相手の言葉や文化を知り、学ぶことは、理解し愛することのはじまり。その機会を提供できて誇りに思う」と語った。「冬ソナ」は日本社会の対韓イメージを変え、「韓国ファン」を増やす大きな役割を果たしている。