4月1日から新年度。駐日韓国企業や在日韓国企業でも入社式が行われ、新社会人が誕生した。韓国企業や日本企業などで働いたり、フリーで活躍する在日の先輩から、新社会人へのメッセージを紹介する。
3月30日、遊技業最大手の㈱マルハン(韓昌祐会長)の新卒者入社式(写真・上)が、都内のホテルで行われた。今年の新入社員は222人(男性175人、女性47人)で、4年制大学卒150人、短大卒4人、専門学校卒8人、高等学校卒60人で、今年も大卒を大量採用した。
韓昌祐会長は、「社訓である努力・信用・奉仕を大切にマルハンは急成長を遂げてきた。年末か来年には株式上場する予定出だ。チャレンジ精神を大切に、マルハンの一員としての誇りを持って胸にがんばってほしい」と、新入社員を激励した。
駐日韓国企業の日本サムスンの入社式(写真・中)は1日、東京・六本木のサムスン新社屋ビルで行われた。今年の新入社員は22人(男性11人、女性11人)。在日韓国人は2人。
李昌烈社長は、「常に自分を磨いて、プロとして認められる人材を目指してほしい」と述べた。
近畿産業信用組合(本店・大阪市)は1日、本店で2004年度の新職員66人(男子22人、女子44人)の入行式(写真・下)を行った。
兪奉植会長が「失敗を恐れずロマンと思想をもってほしい」と訓示。続いて八田理事長が配属を発令した。
◆ 金学千さん(29、㈱博報堂) ◆
経験上、職場で在日韓国人であることがネガティブに作用することはまったく無かった。新人に期待されるのは、向き合う顧客/先輩へのホスピタリティや、課題を発見し、それに対する課題解決力。そして誠意。
社会人生活でも在日韓国人であることを自覚する瞬間があり、その瞬間は学生時代のそれよりもよりリアルに感じる。忙しい日々でも、それを感じて「在日のあり方」について考えてほしい。
正解の無い世の中だから、個人と会社の付き合い方も千差万別。祖国との付き合い方も同じ。重要なのは自己の意思。
在日、韓国、日本という軸だけで物事を捉えるのではなく、グローバルな視点から明確な価値基準を持ち、目標に向かって突き進んでほしい。
在日韓国人である以前に人間力が問われる。そんな時代だと思う。
◆ 李睦美さん(34、韓国文化院) ◆
“10年後の姿を考えた言動”と“韓国を知ること”の2点を伝えたい。日々の夢や思いは明日の己の姿を創る。大切なのは前向きな言葉の使用と目的設定。
“若さ”を理由に周囲や本人が自らに甘えを容認することは最大の落とし穴となり、30代にはその結果が表情や能力に著しく表れる。日々の言動は10年後の在るべき姿を意識すると良い。今、在日の存在は日本人にとって一番身近な韓国となり、情報源となった。
在日は韓国語が話せ、韓国を良く知る存在として認識されているが、現実はそうでもない。より友好的な日韓関係の構築を願い、在日としての存在意義を問う時、我々は積極的に韓国を知る必要がある。
「在日だから知らない」は甘えに過ぎず、誰もが架け橋となりえる事を認識したい。但し、韓国への視覚が偏りすぎぬよう注意を払うこと。
自己の尊さと在日としての存在意義を問い続けてほしい。
◆ 崔芳江さん(27、韓国貿易センター) ◆
自分の入社当時を振り返ると、会社の業務や雰囲気に慣れるのに精一杯だった。先ず始めに社会人として試されるのは、在日であること以前に今までに培った常識・協調性・やる気などの基本的な部分ではないだろうか?
自分が心がけていたのは、明るい返事と笑顔の対応。そして解らない事を素直に上司や先輩に質問をし、出来る仕事をこなして行く事であった。
仕事をしながら在日を感じる瞬間はある。韓国系企業に勤めているせいかお客さんに日本はもう長いの?と聞かれたりすることもしばしば。在日韓国人という存在が案外
日本の方に認識されていないのだとつくづく思う。
「お金を払って学んでいる学生」という立場と、「お金を頂いて仕事などを学ぶ社会人」という立場の差をしっかりと認識し、周りの上司や同僚やお客さんから必要とされ多くの人に愛される社会人になって欲しい。
◆ 金良淑さん(32、通訳・翻訳業) ◆
企業で働くにしてもフリランサーとして働くにしても、仕事をする上で大切なことは、取引先や顧客との間に信頼関係を築くことだ。
信頼を築くには時間がかかるが根気強く努力してほしい。
また、スポーツやエンターテイメントなど日韓を繋ぐビジネスが盛んな今日、例え韓国語は話せなくても、職場で本名を名乗ったり、在日としてのアイデンティティーを示すことが、一昔前に比べれば不自然ではなくなってきた。
社会人になるのを契機に、自己をアピールする手段として本名を使用してみるのもいいのではないかと思う。それは同時に在日という名前を背負うことでもある。