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2004/03/05

<在日社会>拉致議連(平沼赳夫会長)「再入国禁止法案」企図

 日本の国会で改正外国為替・外国貿易法(外為法)が成立したのに続き、北朝鮮の船舶を想定した「特定船舶入港禁止法案」も今国会成立が図られようとしている。そして今回は見送りとなったものの、在日の再入国禁止法案が一部国会議員の中から出され、在日の人権侵害につながるとの強い批判が起きている。

 永住外国人の再入国を安全保障上の理由で禁じることができるとする「再入国禁止法案」は、北朝鮮への経済制裁を視野に入れた「外国為替及び外国貿易法(外為法)」改正案、北朝鮮の船舶の入港禁止を想定した「特定船舶入港禁止法案」とともに、北朝鮮への「制裁カード」となる法案として、自民党の議員有志や超党派の議員連盟によって打ち出されている。

 外為法改正案は1月29日、衆議院本会議で可決され、「特定船舶入港禁止法案」も今国会での成立が図られようとしている。

 外為法改正案は、北にいる家族に送金を行っている在日同胞にも大きな影響を及ぼす恐れがあり、「特定船舶入港禁止法案」については自民党内からも「入港禁止措置は差別的扱いを禁じている国際慣例に反するのでは」との反対意見があるほどだが、拉致事件解決の進展がない中、法案成立に向けた動きが加速化しようとしている。

 そして超党派の「拉致議連」(会長・平沼赳夫前経済相)がこの間、法案成立を目指そうとしたのが出入国管理法案の改正で、在日韓国・朝鮮人などの特別永住者で北朝鮮に渡航した者の再入国を制限できるようにしようとの内容だ。

 カネと船舶に続き人の往来も制限しようとの意図から出されたものだが、在日の歴史的経緯と人権を無視した改正案に、内部からも「やりすぎでは」と批判の声が出て、今国会での法案提出は成されていないが、平沼会長が最近も法案提出に意欲を示すなど、予断を許さない状況だ。

 在日の若者からは、「植民地支配の結果として日本で生まれ育ち、権利闘争を経てやっと特別永住権を持つことになった在日が、祖国の一方である北に渡航したら、日本に戻れなくなるかもしれないとはおかしい」「拉致事件と在日を一緒にしてほしくない」などの抗議の声があがっている。

 在日の高英毅弁護士は「日本に生活の根拠がある人の当然の権利として特別永住権がある。それを制約しようとするのは、あなたが死のうが生きようがどうでもいいという論理で、人道的にも、日本国憲法の精神にも反するものだ」と強く批判している。