東京・調布近辺の在日コリアンと日本人でつくる「異文化を愉(たの)しむ会」が、3月24日に韓国伝統芸能「クッノリ」公演を行う。シャーマニズムをもとにしたミュージカル形式の舞台で、地域での韓日交流を深めるために企画した。メンバーは「草の根交流から真の交流が始まる」と、練習に励んでいる。
「異文化を愉しむ会」は、韓半島の文化に関心を持つ在日韓国・朝鮮人や日本人など22人が集まって、2001年2月に結成した。メンバーは徐々に増えて現在40人で、そのうち在日は10人いる。代表は在日2世の張金順さんで、事務局をやはり2世の呉文子さんが務めている。
会が発足するきっかけとなったのは、呉さんの母が骨折で日本の病院に入院したとき、在日1世で日本語の読み書きが出来ない母が、薬の説明を読めず飲み方がわからなくて苦労したこと、大部屋だったため、他の入院患者に気兼ねしてキムチを差し入れることが出来ず、母の食が進まず、健康を取り戻すのに時間がかかったことだ。
「異文化への関心や理解が深い社会だったら、私の母はもちろん、多くの在日1世が苦労することはなかった」と考えた呉さんは、「私たちも老いを迎える前に、お互いの理解を深める必要があるのでは」と、地域の友人らに相談し、会を立ち上げた。
「言葉や生活習慣、文化の違いから生じる誤解を乗り越え、互いに愉(たの)しみ、分かり合える関係を作りたい」との思いで、会の名称を「異文化を愉しむ会」にした。
会の発足後、毎月1回集まりを持ち、韓国の服飾やことわざについて学んだり、韓国料理教室、韓国舞踊を楽しんだりと様々な企画を行ってきた。調布市の市報にも紹介されるなど地道な活動を続けて成果をあげ、今年無事4年目を迎えた。
そして2002年のサッカーワールドカップ韓日共催大会や最近の韓国映画・テレビドラマブームで、韓国文化への関心がさらに高まる中、地域での韓日交流をさらに深めようと企画したのが、3月24日に調布市文化会館で開かれる韓国伝統芸能「クッノリ」である。
「クッ」とはムーダン(巫女)が巫歌、巫舞を中心に神々への祈願を行った祭祀といわれ、「ノリ」とは韓国語で「遊び」を表す。今回の「クッノリ」は「婚礼クッ」(夫の霊をなぐさめるための結婚式)で、シャーマニズム的要素を取り入れながら、人々が集い遊ぶという意味に重点を置いた構成になっている。出演者も来場者もともに”遊べる”舞台づくりを目指している。
韓日両国で演出を学び、現在日本で生活する鄭淑京さんが作・演出を担当し、在日3世の舞踊家、林麻里さんなど在日と日本人11人と韓国からのゲスト2人の混成メンバーで舞台を構成する。
2月7日に多摩市国際交流センターで開催されたフレンドシップ交流会でダイジェスト版を披露したが、コミカルな演技と韓国舞踊の美しさに、100人を超える参加者から大きな拍手が鳴り響いた。
林さんは、「韓国は近くて遠い国と言われた時期があったが、いまは近くて近い国になった。地域での交流も定着したが、それをさらに充実させたい。気楽で楽しい地域交流を通して、お互いに生きやすい社会を作りたい。」と話す。
呉さんは、「昼夜2回の公演で400人が目標。調布市の後援ももらうことが出来たし、市民の反応もいいので当日が楽しみ。異文化を愉しむ輪を、今回の公演でさらに広げたい」と語る。
公演は24日午後3時と7時の2回で、資料代1000円(小学生500円)。幼児無料。℡090・8510・4772。