在日韓人歴史資料館が24日、東京都港区南麻布の韓国中央会館別館の2、3階にオープンした。在日の歴史を後世に伝えていくことを目的に建てられたものだ。
在日韓人歴史資料館の建設は、在日本大韓民国民団(金宰淑キム・ジェスク団長)が事業主体となって進められた。2003年7月に資料館調査委員会が姜徳相(カン・ドクサン)・滋賀県立大学名誉教授を委員長に、映画監督の呉徳洙(オ・ドクス)氏ら在日韓国人のメンバーと樋口雄一・在日朝鮮人運動史研究会代表ら日本側メンバー合わせて13人の委員で構成され、情報・資料収集などにあたってきた。
各民団県本部や同胞有志、在日の学者・研究者、大阪国際理解教育センター、コリアボランティア協会などの各団体、それに国立民族学博物館や国立歴史民俗博物館などの協力を得て、2005年8月末までに寄贈図書約3300冊、写真約260点、旅行鞄、弁当箱、協和会手帳、足踏みミシンなど品物約160点を集め、それらを整理してオープンへ向けての準備を進めた。
資料整理はまだ途上であり、所蔵資料も十分とはいえないとの声があったが、「開館が資料集積の新たな始まり」として、この日のオープンにこぎつけたものだ。
フロアは解放前の歴史と生活を紹介する常設展示室、解放後の歴史と生活を展示する企画展示室、1930年代の「朝鮮市場」を再現した屋外テラスなどに分かれ、図書資料室や映像資料室も設けられている。
植民地時代、日本へ渡って来るときに使った柳行李、渡航証明書、朝鮮飴売りが使っていた飴切り用ハサミ、解放直後に発行された「自由朝鮮」や「民主朝鮮」などの新聞、雑誌、かつての在日の貧しい暮らしをしのばせるバラック小屋も再現されている。70年代以降活発になった就職差別撤廃運動、指紋押捺拒否運動などの展示もある。
*資料館は入館無料。開館時間は午前10時~午後6時。℡03・3457・1088。
◆「ルーツ知らせたい」 姜徳相館長◆
調査委員会を設置してから多くの家を訪ねたが、すでに1世の遺品を処分してしまったという家庭も多かった。もう少し早く始めていればと後悔することも多々あった。それでも数千点の資料が集まり、開館にこぎつけることが出来た。
在日社会は1世がほとんどいなくなり、2、3世の時代になり、在日の歴史、自己のルーツを知らない青年も増えている。1世の苦難を知ると同時に自己のアイデンティティー確認の場にもしてもらいたい。
日本の方にも大勢来てもらい、在日への理解を深めてもらえれば、それが多民族社会の一助になると信じる。
◆在日の運動として◆
在日韓人歴史資料館がオープンした。調査委員会がスタートして2年、解放60年という節目の年に開館にこぎつけた。
在日の歴史資料館建設は、歴史学者の故朴慶植氏が長年提唱してきた。朴氏は75年の生涯をかけて約6万点にものぼる膨大な資料を集めたが、道半ばで事故死し、その遺産は滋賀県立大学に収められることになった。今回の在日韓人歴史資料館にもそこからごく一部が寄せられてはいるが、在日100年の歴史を展示する資料館としては、やはり物足りないと言わざるを得ない。
在日韓人歴史資料館が、在日の歴史を伝える本格的な資料館となるべく、全在日的な運動となることを期待したい。