タイのバンコク・スパチャラサイ国立競技場で「第三国無観客試合」の中で行われた2006ドイツW杯アジア最終予選B組、日本は北朝鮮を破り、3大会連続となるW杯本戦出場を、世界で最初に決定した。在日選手2人がメンバー入りした北朝鮮はグループ最下位でW杯出場はならなかった。韓国はクウェートを破り、6大会連続で出場を決定した。
北朝鮮代表チームには日本のJリーグで活躍する在日3世の安英学、李漢宰の2人がメンバー入りした。
日本のさいたまスタジアムで2月9日に行われた同組み合わせの試合では、しかし安選手は足のけがが良くならず試合には出場しなかった。李選手はMFで先発出場した。
バンコクでは在タイ日本人や日本から駆けつけたサポーターが、スタジアム周辺などで応援を繰り広げたが、在タイ韓国人も韓国料理店に陣取って北朝鮮チームを応援する光景が見られた。
日本では各地の朝鮮学校で生徒たちが集まって、「イギョラ」(勝て)と北朝鮮チームに声援を送った。また東京・新大久保のコリアタウンなどでも、在日コリアンや韓国人ビジネスマンがテレビで北チームを応援するようすが見られた。
駐日韓国企業に勤務する在日3世の女性は、「同じ民族として北を応援している。南北、そして日本と3チームそろって出場できればいいのに」と話した。
北朝鮮と日本は日本人拉致問題など政治の影響が心配されたが、2月9日に日本のさいたまスタジアムで行われた試合、そして今回の試合と、2人の在日Jリーガーは「北朝鮮と日本の懸け橋になりたい」との信念で、記者会見などにも積極的に応じた。
また平壌で行われた対イラン戦で、判定に抗議して北選手が審判に詰め寄るのを安選手が制止し、昨日の試合でもレッドカードに怒った北選手が審判に向かうのを李選手が体を張って制止するなど、国際ルール厳守とフェアプレー精神を北朝鮮チームに伝えようと努力した。この両選手の姿に日本社会からも、「スポーツを通じて両国を結ぶ重要な役割を果たしている」など高く評価する声が聞かれた。
◆韓国各地で熱狂的な応援◆
韓国国民は9日未明、各家庭や居酒屋などでテレビ前に釘付けとなり、歓声を上げて「太極戦士」たちの6大会連続のW杯本選出場確定を祝った。
この日、カフェや居酒屋の中には「本日、韓国-クウェート戦中継します」「大型スクリーン設置」などと書かれたタテ看板を出し一晩中「応援客」の呼び込みを行う店も多かった。
また、京畿道富川市の公衆浴場で試合を観戦したある主婦は、「眠いのを我慢して大型テレビのある公衆浴場に来た。勝って本当に気持ちがいい」と話した。
イラクで平和再建輸送任務にあたっている空軍第58航空輸送団の将兵たちもテレビで応援した。
クウェート現地で応援した韓国同胞応援団500人は試合開始のはるか前から競技場に陣取り、「Be the Reds」と書かれたTシャツ500枚、太極旗とうちわを配って応援に備えた。韓国からやってきた「レッドデビル」42人も太鼓などを持って加わり熱い応援を繰り広げた。
◆新旧うまく融合 スポーツライターの大島裕史さんの話◆
「韓国チームは、朴智星らW杯経験者と19歳の朴主永ら新旧の世代がうまくかみ合って、本大会出場を果たした。ボンフレール監督は基本的にヒディンク路線を踏襲しているので、選手にとまどいはなかった。課題はディフェンスと、だれがチームリーダーになるかだろう。
北は予選で敗退したが、それよりも大会をボイコットせずにきちんと試合に臨んだことの意義が大きいと思う。この間、国際大会に出場していなかったため、北のサッカーは世界とレベルが開いた。今後経験を積んでいくことが大切だ」