韓日友情年特別企画として、「韓国最高の詩人」と評される高銀さんを招いての講演会「日韓詩人の対話 『アジア』の渚で」が1日、東京・早稲田の早稲田大学大隈講堂で開かれた。高さんは「東北アジアに共同体を作ろう」と呼びかけ、詩人の立場で貢献したいと強調した。
詩人を志してきた高銀さんは韓国戦争時、報復虐殺を目撃して精神的混乱に陥るなどの経験を経て、出家。僧侶として活躍するが、還俗して詩人に戻った。
一方軍事政権に反対して60年代から民主化と統一運動に従事し、80年の光州民主化闘争時には金大中氏らとともに逮捕・拷問されるという経験を持つ。
2000年6月の南北首脳会談で、金大中大統領(当時)の要請を受けて同行し、晩餐会の席上で「大同江のほとりで」と題した即興の詩を朗読し、統一への思いを歌い上げて絶賛された。日本をはじめ世界10カ国以上で詩集が翻訳されるなど、韓国を代表する知識人の一人である。
日本を代表する詩人の吉増剛造さんと数年前から親交を重ね、対談、往復書簡集などを発表してきた。今回の来日はその2人の対談集「アジアの渚で 日韓詩人の対話」(藤原書店)の発売を記念してのもの。高さんは韓日関係、東アジア共同体への展望を示すとともに、統一の一助となるため、約300人が参加する南北作家会議を今月北朝鮮の白頭山で、8月ソウルで開催予定と語った。また南北の同質性を確保するため、南北共同で国語辞典の編さんに取り組むことも明らかにした。
◇韓日関係は進展 ―――高銀さん◇
日本語に言霊という言葉がある。言葉は単なる記号でなく魂が宿っているという考え方だ。まさに言語は世界中の魂が複合的に重なり合ったものだ。私は70~80年代、民主化運動に携わって拷問を受けたことがある。(苦しみから逃れるため)取調官の思うがままに文書を書き、言葉というものに絶望した。しかし、そんな経験をしても言葉を離れて生きることは出来ない。
詩そのものは世の中を変えないが、詩が人の心を打つとき、世の中を変化させる可能性があるだろう。詩は人間が本来持っている感情を呼び覚ますものであり、人間がいる限り詩はなくならない。2000年の南北首脳会談は、同民族が2つに分かれて敵対することの無意味さを世界中に示した。この5年間に一進一退の時期もあったが、南北関係が進んだことは確かだ。今後も交流は進展するだろう。
同じ漢字文化圏の東アジアに、共に生きる場「東北アジア共同の家」を作ることができればと願っており、日本の学者らと話をしている。韓日関係には問題もあるが、以前よりはいい関係になっており、今後さらに良い関係になることは確かだ。
21世紀は文化の時代といわれる。文化が政治・経済をリードしていくだろう。韓日だけでなく、中国や東南アジアなどの文化も相互に広がり、EUのような関係がアジアにできればと願っている。