韓日関係が歴史問題で揺れる中、市民団体、学者などを中心に共同で歴史教科書を作ろうとする動きが活発化している。また「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書採択を阻止しようとする運動も起きている。各地の動きを追った。
在日韓国青年会(ソ・スユン会長)はこのほど、東京・有楽町の外国特派員クラブで記者会見を開き、「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書が検定を通過し、文部科学大臣が「(慰安婦や強制連行の記述が減ったのは)良いことだ」と述べるような「異常事態」に憂慮を表明した。
そして在日3、4世が中心となる青年会として、アジアに平和をもたらし、日本の子ども達に正しい歴史を知ってもらうためにも、今年8月の2006年版教科書の採択を前に、「偏向教育を台頭させない」よう日本の市民、教師、父母とともに活動を続けていくと訴えた。
民団兵庫は6月から「歴史教科書問題」講座を兵庫韓国会館で全5回開催、この問題の本質について参加者に訴える。
韓中日の歴史学者が10回にわたる編集会議、5次にわたる原稿修正を重ねて編集した「未来を開く歴史 東アジア3国の近現代史」は26日、3カ国から同時発刊された。
東アジア共同体をつくるためには「歴史認識の共有を」との問題意識で作成されたもので、3国の国内状況、相互関係、植民地支配と抵抗運動について記述した後、東アジアの和解と平和のための提言が掲載されている。
日本での発行元は高文研で、29日には「日中韓3国共通歴史教材出版記念シンポジウム」を午後1時30分から文京区民センターで開催、日本側執筆委員会委員長の大日向純夫・早稲田大学教授が報告する。
ほかにも韓国の全国教職員労働組合大邱支部と広島県教職員組合所属の教師らが「日韓共通歴史教材 朝鮮通信使」(明石書店)を発行。
一方、世界各地をめぐる旅を行っているNGO「ピースボート」は、韓国のNPO「環境財団」とともに、韓日市民600人による史上初の「韓日共同クルーズ」を今年8月に行うことを決定。
8月13日に東京を出航し、15日に釜山、その後ソウル、上海、南京、沖縄、長崎と戦争の被害地をめぐる旅で、約2週間の期間中、歴史教科書、独島/竹島、靖国参拝などをテーマにディスカッションを繰り広げる。金大中前大統領への表敬訪問も予定されている。
◆長期的視点で取り組みを◆
ほかにもアジアからの留学生が多数在学する立命館アジア太平洋大学の学生たちによる、世界の歴史教科書を比較研究する「世界の歴史教科書博覧会実行委員会」など、歴史認識の共有化を求める運動が各地で起きている。
先日東京大学で東アジアシンポを企画した姜尚中東京大学大学院情報学環教授は、「東アジアはグローバル化が進んでいるが、近くなればなるほどナショナリズムが高まり、あつれきを生む皮肉な現象を生んでいる。いまこそこの地域の平和と安定のため、長期的な視点で歴史問題に取り組まないといけない。歴史問題が政治の表舞台に登場しつつあるのだから」と強調した