北朝鮮と日本の試合が行われた9日、さいたまスタジアムには在日3世を中心とした北朝鮮サポーター約5000人が集まり、大応援を繰り広げた。北朝鮮代表に選ばれた安英学、李漢宰の2人の在日Jリーガーも先発メンバーで奮闘した。各地のコリアタウンでは南北関係なく、北朝鮮チームを応援する在日コリアンの姿が見られた。
朝日決戦の日、在日朝鮮人の応援団は都内の朝鮮大学校生、朝鮮中高級学校生、そして全国から約5000人が集まった。関西地方は県本部ごとに早朝大型バスで出発、午後6時前後に会場に到着した。朝鮮総連京都本部は50人が参集した。京都在住のペ順福さん(57、主婦)は、「厳戒態勢と聞いていたので心配していたが、会場は落ち着いた雰囲気で安心した。精一杯応援したい」と語った。応援団は赤い服や帽子、民族衣装姿で、民俗楽器をうち鳴らし、北朝鮮国旗を振って大応援を繰り広げた。
「南北の垣根を越え同じ在日同胞として応援に来た」と青地の統一旗を振る若い在日女性の姿も見られた。
開始早々日本に先制されたものの、後半北朝鮮が同点に追いつくと、応援席は大騒ぎとなり、あちこちで抱き合い、涙ぐむ姿も見られた。試合は終了直前、日本の劇的ゴールで敗戦に終わったが、下馬評を覆しての好試合に満足そう。
ペ順福さんは「帰り際、日本のサポーターがいい試合だったと声をかけてくれてうれしかった。6月に北で試合があるが、多くの日本人に北に行ってもらって、北に対する理解を深めるきっかけになってもらえればと思う。北のサッカーレベルが向上するチャンスにもなるはず」と興奮気味に語ってくれた。
安英学選手と朝鮮学校で同級生だった金松愛さん(26、会社員)は、自宅近くのレストランで友人とテレビ観戦。金さんは「私たちも北チームについては未知数だったが、接戦になって良かった。安さんも活躍してくれてうれしい。6月のホームでは絶対に勝利してもらいたい」と話す。
東京・新宿のコリアタウンでは、韓国料理店で大型テレビを見ながら応援する光景があちこちで見られた。料理店の一つ「大使館」は、北朝鮮を応援する人のために北国旗の小旗を用意した。試合が始まると店内は北を応援する人、日本を応援する人、和気あいあいに試合観戦した。友人と北を応援した在日3世の女性(25、会社員)は、「朝鮮学校時代の友人と来た。在日の2人は同年代だが、コメントもしっかりしていて、試合もがんばってくれてうれしい」と述べた。大阪のコリアタウンでも、試合に熱中する在日の姿が見られた。
試合後、安英学選手は「在日の応援団はとても励みになった。日本のサポーターが最後に拍手してくれたのもうれしかった」と話した。李漢宰選手は「今後に向けて光が見えた」と、早くも次の試合に心を向けた。