在日の民族・文化運動の拠点の一つとして活動してきた在日韓国YMCA(東京・水道橋)が、4月25日に創立100周年を迎える。同センターでは2月から記念事業を開始し、在日100年の歴史を振り返るとともに、未来の方向性を提示していく。
100周年記念事業として在日韓国YMCAが力を入れているのが、在日の未来についての取り組み作業だ。
まず2月7日に同センターで、記念シンポジウム「在日を生きるための現住所-未来への挑戦」を開催する。在日コリアンとともに歩んできたYMCAの歴史を振り返り、在日の未来を2世と3世の対論から考える企画で、張学錬弁護士、ペ・ジュンド・川崎市ふれあい館館長、李鍾元・立教大学教授らが報告する。
そして5月から12月にかけて全15回のセミナー「切れてつながる在日と日本の未来」を開催し、在日の課題を掘り下げる。それらの成果を来年2月に予定するシンポジウムで発表する。
さらに在日同胞研究会を設置し、在日社会の未来を担う指導者育成についても研究する。フェローシップを設立し、次代の指導者を育てたいとしている。
他に1919年の2・8独立宣言記念資料室を同会館10階に設置し、2・8運動研究の拠点とする。また現在の会館は移転したため、実際に2・8宣言を行った地とは違うが、その実際の会館跡地に、民団青年会中央本部と協力して記念碑を建てる計画もある。
4月25日には創立100周年記念式を開催。100年史も発行予定だ。
金秀男・YMCA総務は「在日社会の多様化が進みつつある中、新しい生き方を提示していきたい。在日の指導者育成のため、人材を発掘して、じっくり勉強してもらいたいがそのための資金カンパも訴えたい。また地下ホールに向かうエレベーターを設置して、高齢者や障害のある人にも利用しやすくしたい。そのために5000万円の創立100周年記念募金を募っていく」と話す。
在日本韓国YMCAは、ソウルYMCAに続く2番目の韓国YMCAとして1906年、東京に誕生。祖国の受難期に当たり、キリスト教信仰に立脚した明日の指導者を養成することを目的に、前年に閉鎖された在日公使館に代わり、韓国からの留学生の保護、日本語教育、下宿の世話、進路相談等の活動を始めた。
1919年には3・1独立運動の導火線となった「2・8独立宣言」が発表され、1923年の関東大震災時には、朝鮮人虐殺の実態調査活動に従事している。過酷な植民地統治の中、独立を願う留学生の人格形成の場であり、独立運動の拠点でもあった。
また、当初より聖書研究、祈祷会が熱心に続けられ、1908年には現在の在日大韓基督教会を生み出し、苦難の時代に世の光、地の塩としての役割を果たしてきた。
70年代には就職差別撤廃運動、80年代には指紋押捺拒否運動、外国人登録法改正運動などの支援を行い、90年代には戦後補償運動、地方参政権獲得運動に携わってきた。
99年には在日の各種運動、韓日交流の場となるべく、会館を全面的に改装して多目的ホール「在日本韓国文化館(スペースワイ)」をオープン。
現在、『在日同胞文化の創造と多文化共生社会をめざして』をスローガンに、韓国文化を中心とした国際文化活動、日本語学校、在日本韓国文化館(スペースワイ)を活用して、韓日文化交流、宿泊研修事業等を展開すると共に、地域社会奉仕活動を進めている。
財政的には厳しい状況が続いており、在日社会、本国政府の更なる支援が必要とされている。詳細は℡03・3233・0611。
◆YMCAとは◆
YMCAは、1844年イギリスのロンドンで設立。現在、世界約120の国と地域にあり約3000万人の人々が参加している。キリスト教精神に基づき青少年の人格向上、精神、知性、身体の調和のとれた発達をはかり、民主的で平和な社会のために奉仕する世界最大の青少年団体。