阪神大震災の復興を祈念して、震災のあった95年から行われてきた市民有志による手作りのコンサートが、今年で11年目を迎える。今年は5月5日に始まり、10月まで17カ所で開催。27日には在日3世のピアニスト林由香(リム・ユヒャン)さんがソロコンサートを行う。林さんは震災で家が全壊した経験を持つ。
コンサートを企画したのは和歌山県在住の会社員、松田一広さん(58)。阪神大震災が起きた95年5月、被災した神戸市民への励ましになればと、実行委形式の音楽会を企画。コバケンの愛称で親しまれている指揮者の小林研一郎さんの協力を得て同年5月、「阪神大震災の被災者を励ますコンサート」を開催した。2001年からは「阪神大震災復興祈念コンサート」と名称と内容を変えて継続してきた。
必要な費用はすべて企業や個人の寄付金でまかなう方法で続けたのがユニークな点で、昨年12月と今年1月に開いた計6公演には5200人が参加。カンパも約388万円が集まって赤字を出さずにすむなど、神戸市民の間にコンサートが定着している。
松田さんは、「コンサートに来てくれた被災者から、『励ましになった』『これからも続けてほしい』など多くの声をいただいたのが、続けてきた原動力。定年退職を迎える2008年5月まで取りあえず継続したい」と話す。
また、このコンサートの趣旨に賛同し、2004年から演奏家として参加しているのが、在日3世の新進ピアニスト林由香さんだ。78年神戸市長田区生まれで、4歳からピアノをはじめ、大阪音楽大学音楽学部卒業後、ピアニストとして活動している。
林さんは2005年5月にソロデビューし、同年11月「韓日国交正常化40年、阪神・淡路大震災10年 KOREA-JAPAN文化交流の集い」にも出演した。
今回、27日に西宮市民会館アミティホールで開催される「阪神大震災復興祈念コンサート2006『春』」シリーズ「リム・ユヒャン 愛と青春のピアノ物語」で、ショパンやリストを演奏する。さらに10月22日にも同ホールでリストの名曲だけを集めた音楽会を開く。
林さんは、「阪神大震災の時は高校一年生だった。家が傾き、割れたドアから外に出たが、一面火の海だったのを鮮明に記憶している。11年経って町並みは復興したが、家族を亡くした人や、経済的に困窮している人の苦しみは今も続いている。音楽を通して少しでも被災者の癒しになればうれしい」と話す。
※27日のコンサート入場希望者は住所、氏名、年齢、職業、本紙の感想を明記の上、東京本社・阪神大震災コンサート係まで。入場料は無料だが、コンサート終了後に一人1000円ほどのカンパを運営資金として募る。