ここから本文です

2006/11/10

<在日社会>在日2世 姜仁秀氏、中国・延辺に孤児院建設

  • zainichi_061110.jpg

    開館式を待つ孤児たち

 中国吉林省延辺朝鮮族自治州の龍井市で孤児収容施設「新星館」の完工式が11月5日行われた。在日同胞と日本人有志により設立された「東アジア児童基金会」(本部・東京、姜仁秀理事長)が建設したもので、朝鮮族の孤児を収容対象とする。この日早速、5歳から12歳までの孤児7人が収容された。現地でこの孤児院完成は大きな話題を呼び、追加建設の必要性が叫ばれている。

 開館式には、日本から金石生・東アジア児童基金会副理事長ら基金関係者のほか、新星館館長、現地幼稚園園長、現地病院院長ら地元関係者ら50余人が参加した。特に、龍井市の共産党書記もテープカットに参加、祝辞を述べたのが目を引いた。

 あいにくの小雨まじりの気温も低い1日だったが、チマ・チョゴリを着た現地住民による歌、踊りなどで開館を盛大に祝った。

 姜仁秀(カン・インス)・同基金理事長は開館あいさつ(代読)で、「貧しいことや孤児であることは恥ずかしいことではありません。貧しさに負け、孤児であることに負い目を感じて将来に希望をもてず、幸せになるために自ら努力出来ないことが不幸なことです」と述べ、「新星館入所を契機に将来の希望を育ててほしい」と励ました。また、「新星館の日常を支えるため、この村の住民から5人の職員を採用する」ことを明らかにした。

 新星館建設は5月に着工。敷地2200平方㍍、建物は160平方㍍の大きさで、煉瓦造り平屋。8部屋があり、図書室も備えている。部屋はテレビも置かれ、清潔で家庭的な雰囲気を醸している。特に、厳しい寒さに震えないようにすべて床暖房にしてある。

 収容する対象者は、中国朝鮮族の孤児、乞食同然の生活をしている孤児などで5歳から12歳までの男女。彼らの生活を保障し、地元の学校に通わせるとしている。

 新星館は、孤児らの収容施設のモデルケースとして建設された。基金関係者によると、今後、第2第3の収容施設建設も検討しているという。

 北朝鮮と国境を接する龍川市は中国で朝鮮族が最も多い地域で、歴史を遡れば日本の植民地時代に多くの同胞が移住、朝鮮独立運動の根拠地の一つだった。だが、長い間開発から取り残された貧困地帯であり、社会の底辺で置き去りにされた孤児問題が深刻化していた。

 この孤児施設建設を思いついたのは、広島で八千代病院や老人ホーム「メリィハウス」を経営する在日2世の姜仁秀氏(62)。

 現地の窮状を知り、支援を申し出たのが始まりで、経営する母体として「東アジア児童基金会」を設立した。姜氏が理事長になり、現地に詳しい平井達夫氏(同基金の副理事長)が支援室長を務めて孤児院づくりに乗り出し、この日の開館となった。

 姜仁秀理事長は、「同じ民族として孤児の惨状は看過できない。少しでも手を差し伸べ苦境を救ってあげたい。幸い、中国の地方政府も社会貢献事業として理解し、応援してくれているので、多くのみなさんの協力を頂いて孤児院運営を軌道に乗せたい」と訴えた。

 今回の建設費は600万円。姜理事長がそのほとんどを負担したが、今後の運営経費のため、一口3000円で募金を呼びかけている。


◆東アジア児童基金会連絡先◆

東京都杉並区浜田山1ー2ー21。℡03・3302・0382。email:info@easia-cf.org銀行名:三菱東京UFJ銀行虎ノ門支店(041)普通口座番号:2991389口座名:東アジア児童基金会 掘信