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2006/03/24

<在日社会>長期囚の姿追った映画『送還日記』・いまも残る分断の悲劇

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      三池炭鉱での強制労働について語る沈載吉さん

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      韓国の獄中から釈放後、北朝鮮に送還される非転向長期囚

 九州の三池炭鉱で働いた人々の姿をまとめたドキュメンタリー『三池 終わらない炭鉱(やま)の物語』が、4月1日から都内で上映される。強制連行された当時の朝鮮人労働者も登場し、証言する。一方、韓国の獄中に長年捕らわれ、釈放後は北朝鮮に送還された非転向長期囚らの姿を追った記録映画『送還日記』も公開中だ。

 『送還日記』は、韓国の社会問題をテーマに記録映画を撮り続けてきた「プルン映像」の金東元(キム・ドンウォン)監督による新作。

 北朝鮮のスパイとして韓国で逮捕され、獄中でも思想転向しなかったいわゆる「非転向長期囚」。長い獄中生活を経て釈放された彼らの姿と、南北首脳会談後の2000年9月、北朝鮮に送還されるまでのようすを記録したドキュメンタリーだ。

 92年、貧民街に入り都市貧民の生活に照明をあてていた金監督が、おもいがけず非転向長期囚であった二人の老人と知り合うことになり、そのことがキッカケとなって10余年の歳月に渡り『送還日記』を制作した。韓国では公開直後から大ヒット。

 最長45年間もの服役をした老人、釈放後老人ホームに収容された人、北の食糧危機を絶対に認めない老人など、年老いた彼らの姿と、彼らの送還をめぐる韓国内の対立が詳細に描かれる。

 字幕翻訳は在日3世の尹春江さん。尹さんは、「知られざる世界にいた人たちの生き様がとても興味深い。金監督がとても温かい目で彼らを撮影していることに好感を持った。彼らと彼らを取り巻く人たちの痛みがストレートに伝わる。日本人はもちろん多くの在日の人に見てもらいたい」と話す。

 金監督と日本の森達也監督との対談を収録した本「送還日記」(リトルモア)も発売中。製作背景、韓国での上映後の反響、シナリオなどが収録されている。

 三池炭鉱で働いた人々の姿をまとめた「三池 終わらない炭鉱(やま)の物語」は、三池炭鉱の歴史を通して、日本が歩んだ戦争と平和の道を考える作品だ。

 三池炭鉱は福岡県大牟田市を中心に20あまりの坑口(抗内への入口)を持ち、その坑道は有明海の下に迷路のように延びていた。最も深い所では海面下600㍍にも及ぶ。一時は全国の石炭の4分の1を掘り出していた日本最大の炭鉱。

 1939年には炭鉱への朝鮮人強制連行が行われ、多くの朝鮮人が働かされた。

 映画では朝鮮人の収容所として使われた馬渡社宅の壁に残された「私はいまは捕らわれているが、一生懸命生き抜こう。いつか故郷に帰ろう」という壁書き、22歳で韓国・京畿道から強制的に徴用され、重労働と暴力に苦しみながらも生き抜いた沈載吉さん(83)の証言などを紹介。

 沈さんは、「村から連行された3人のうち私以外の2人は死んだ。革ベルトでなぐられたことは忘れられない」と話す。

 三池炭鉱は戦後、1959年に労働争議、63年には死者458人を出した炭じん爆発事故があり、97年に閉山された。

 ドキュメンタリー映画を長年撮り続けてきた熊谷博子監督が、30を越す炭鉱関連施設の撮影と100人近い人たちへの証言を集めて映画化した。

 熊谷監督は、「証言してくれた沈さんの背後には、犠牲になった多くの朝鮮人がいる。歴史を知り共有することでしか、明日を見ることは出来ない。それを伝えたかった」と話す。


◆プレゼント◆

 映画は4月1日より毎日10時50分モーニングロードショーで公開。℡03・3371・0088(ポレポレ東中野)。入場券を5組10人に。住所、氏名、年齢、職業、希望プレゼント名、本紙の感想を明記の上、東京本社・読者プレゼント係まで。