在日2世の詩人、韓龍茂さんが韓国で出版した詩集「ピョル(星)」が、韓国の創造文学2006年度新人賞を受賞した。在日の作家が同賞を受賞したのは初めて。韓さんに受賞までの経緯、在日文学への思いなどについて聞いた。
――文学に関心を持ったのは。
子どものころから世界の文学作品を読みあさった。民族学校に通うようになってからは、日本語とハングルで詩を書いていた。20歳の時に7・4南北共同声明があったが、その声明についての思いを詩にして、それが同胞紙に掲載されたのが最初だ。その後も投稿を続け、北朝鮮で発行されている「統一文学」に出した詩が認められて80年に朝鮮作家同盟新人賞をもらった。在日2世でこの賞をもらったのは極めて珍しいとのことだ。
――韓国との交流は。
90年代になって作家の南北交流が進み、北京で開かれた国際コリア学会で南北の作家が発表会を行い、私も参加した。10年ほど前にソウルでウリ民族作家大会が開かれ、南北と海外同胞の共同作業で「海外文学」が作られた。ここに短編を発表するようになり、これまで4、5回載せている。そうやって南北の作家と親交を重ねる中で、韓国で詩集を出すことになり、今回「ピョル(星)」を発行した。それが創造文学新人賞を受賞することになった。韓国人は詩を愛する民族で、詩集も数多く発行されている。その韓国で評価されたことは、とてもうれしい。
――韓国語での創作活動にこだわり続けた理由は。
日本語で作品を書き、それが評価された在日の作家は、芥川賞を受賞した柳美里など何人もいる。私も日本語で短編を書いたりしているが、民族への思いというか、ハングルで作品を書きたい気持ちが強かった。またそれを通して在日社会の役に立ちたいとの意識もあった。ハングルを必死に勉強して創作したが、在日がハングルで文学を書いても発表の場が少なく、身もだえするような毎日だったが、今回の受賞でこれからは韓国で発表の場が増えると思う。
――受賞した「ピョル」について。
大きく4つに分かれている。1が「星」、2が「人生」、3が「父母」、4が「時調 異国の地日本で」だ。それぞれ17編前後の詩を載せていて、全部で約70編になる。これまで書きためた詩をまとめたもので、私の人生への思いが表現されている。
在日の若者も韓国文学、中でも詩にぜひ関心をもってほしい。まず日本で出されている翻訳詩集を読んでもらいたい。さらにハングルを学んで、原文を読めるようになってもらいたい。詩をたしなむ社会は文化水準の高い社会だ。在日には文壇がないが、将来在日文壇が出来ればと願っている。在日文学も引き続き追い求めたい。
*3月19日に東京の京王プラザホテル「韓龍茂詩集 出版記念パーティ」が開催される。