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2007/05/25

<在日社会>朝鮮通信使400周年・「未来に向け韓日の信頼構築を」

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    朝鮮通信使の再現行列を見ようと大勢の見物客が沿道を埋めた(20日、静岡市内)

 19、20の両日、静岡市内では「コリアウィーク2007 in 静岡 朝鮮通信使フェア」と題して、様々なイベントが行われた。また静岡市が新たに制作した映画「朝鮮通信使」の完成記念上映も行われるなど、朝鮮通信使一色の2日間となった。「朝鮮通信使400年日韓国際交流シンポ」では、未来に向けた韓日の信頼関係構築を確認した。

 静岡市清水区の清水テルサでは、記念シンポジウム「駿府家康と朝鮮通信使往来」(朝鮮通信使縁地連絡協議会、静岡市主催)が開かれた。

 静岡在住の評論家、金両基さんが「駿府発家康の平和外交」と題して基調講演を行い、「学生時代に朝鮮通信使関係の文献を読んだのが縁で、通信使に関心を持つようになった。87年から静岡に住んでいるが、当時は朝鮮通信使について知っている人は少なく、通信使が宿泊した清見寺もマスコミ関係者でさえ知らなかった」と振り返り、朝鮮通信使への認識がこの間日本社会で深まったことの意義を語った。

 そして徳川家康の勇気と行動力によって朝鮮との外交が進んだことを説明し、「平和を実現するには行動が必要なことを歴史から学ぼう」と強調した。

 岩崎鉄志・静岡県立大学名誉教授は、「使節との『唱和』 駿府の青年徳田見龍」と題して報告。清見寺に残る通信使の漢詩について説明した。小幡倫裕・韓国平沢大学校助教授は、「壺谷南龍翼の人物像」と題して、朝鮮通信使の従事官だった南龍翼について述べた。

 シンポジウム終了後には、静岡市が2000万円の予算を投じて制作した記録映画「朝鮮通信使」が上映された。

 小嶋善吉市長は、「400年という節目の年を迎え、朝鮮通信使という歴史の重みをきちんと伝えていくことが大事と考え、今回の行事を企画した。映画は韓国でも上映予定であり、またDVDにして図書館などに配布したい」と述べた。

 さらに、「静岡空港の建設が現在進んでおり、ソウルとの路線が実現したら静岡と韓国はさらに深い関係になると確信する」と語り、関係発展に大きな期待を示した。

 山本起也監督は、「歴史的な遺物の撮影だけでなく、静岡市民の参加した(行列)場面も一部入れて、映像効果をあげるようにした。静岡の財産として映画が残ってほしい」とあいさつ。上映会は家族連れなどで満員となり、通信使をしのばせる映像に拍手が起きた。

 20日には静岡市内のホテルで、「朝鮮通信使400年日韓国際交流シンポジウム」(朝鮮通信使交流議員の会、静岡市主催)が、「次代へつなぐ善隣友好の輪」を主題に開かれた。

 柳明桓・駐日韓国大使は、「朝鮮通信使の現代的意義を話し合うことは大きな意味がある」とあいさつ。

 基調講演を行った権オギ・元韓国国務副総理は、「朝鮮通信使の存在は、共通の話し合いの場がいかに大切かを(私たちに)示した。韓国と日本が歴史的な負の遺産を乗り越え、開かれたアジアを作っていく必要がある。そのために時間をかけて相互理解を広げていくことが大切」と強調した。

 原田令嗣・衆議院議員(”朝鮮通信使”交流議員の会事務局長)は、「信頼関係をつくる重要性を朝鮮通信使から学ぼう。民間交流を発展させることが友好関係構築の第一歩になる」と語った。また、朝鮮通信使国会議員連盟の朴振氏は、「文化交流を促進し、未来に向けた信頼関係を築こう」と訴えた。

 シンポジウムの最後には、韓日が未来に向けたパートナーとして信頼関係を築いていく大切さを、静岡から全国に発信していくことを確認した。

 朝鮮通信使の再現行列には、民団静岡が全面協力した。金光敏団長は、「民族衣装をそろえるなど準備が大変だったが、韓日友好を願う民団の意志を示すために県本部一丸となって努力した。未来に向けて良い関係をつくるために今後も努力したい」と話した。

 19日には、朝鮮通信使ゆかりの自治体でつくる「朝鮮通信使縁地連絡協議会」関係者による「第13回朝鮮通信使ゆかりのまち全国交流会」も開かれ、各地での取り組みを報告するとともに、10月7日に彦根大会を開くことを確認した。

 その後、「縁地連朝鮮通信使関係地域史研究会総会」が開かれ、西南学院大学国際文化化学部講師の尹芝恵さんが、「日本人の描いた朝鮮通信使―楽隊に注目して」と題して報告した。