映画『風の外側』が、12月22日から全国公開される。下関を舞台に在日3世の青年と日本人女子高生の恋愛模様を描いた作品で、俳優の奥田瑛二が原作・脚本・監督を担当。下関では10日に先行公開され、話題を呼んでいる。
映画の舞台となる山口県・下関は韓国・釜山との連絡船の発着地で、日本による植民地時代、多くの韓国人が下関を経由して日本に渡ってきた。いまも在日コリアンの密集地が残るなど、韓国との関係が深い。そのような下関の時代背景が映画にも登場し、在日密集地で暮らす在日1世、帰化して出自を隠す在日などが登場する。
主人公の在日3世の青年も就職差別を受け、民族的アイデンティティーに悩み、女子高生に本名を名乗ることが出来ない。そんな在日青年の心情が淡々と描かれる。また、日本人女子高生の真理子も、出自に秘密を持っている。
奥田監督は在日密集地などで取材を重ね、在日の歴史、生活風景などを学んだ。民族差別などの障壁を乗り越えようとする男女を描くことで、「夢を持って生きることの大切さ」を訴えている。ロケ地のひとつであるグリーンモール商店街には、在日コリアンが多く店を構える異国情緒あふれる場所で、毎年11月には「リトル釜山フェスタ」が開催され、コリアン・ムードでにぎわう。
奥田瑛二監督は演技派俳優として長いキャリアを持ち、国際的にも高い評価を得ている。2001年に『少女~an adolescent』でデビュー。2006年に『るにん』『長い散歩』を発表し、今回の『風の外側』が第4作となる。
主演は、モデル出身でドラマ「バンビーノ」で注目された佐々木崇雄(27)と、奥田瑛二の次女でこれが映画デビューとなる安藤サクラ(21)。奥田監督自らも父親役で、また真理子の通う高校の教師役で奥田瑛二の妻、安藤和津(59)も出演するなど、奥田ファミリーで映画を作りあげた。
■ストーリー
下関にある名門女子高合唱部でソロを務める真理子は、音大目指して毎日レッスンに励む。ある朝、通学途中に男たちに絡まれ、鞄を海に落としてしまう。海に飛び込んで拾ってくれた青年に感激した真理子は、その青年に再び会い、下校時のボディガードになるよう頼む。口数が少なく、名前も名乗らない青年だったが、やがて二人は恋心を抱く。しかし、ヤクザの下っ端だった青年が殺しの仕事を引き受け 。