在日2、3世でつくる民族楽器重奏団「ミナク」の康明姫代表(49)と、イベント事務所ハン・コーポレーションの韓至彦(45)さんが、シルクロードをテーマにした音楽史劇の上演を計画している。「壮大なシルクロードを描くことで異文化交流の大切さ、そして在日の文化活動を表現したい」との趣旨で行われるもので、企画への賛同者を募っている。
同企画は、古代シルクロードに生きた実在する人物を題材に、シルクロードによって伝来された様々な音楽やパフォーマンス、芝居を組み合わせたオリジナル史劇を上演するもの。
シルクロードが、東洋と西洋を結ぶ文化・経済交流の総本山となったことの意味を、シルクロードに生きた実在の人物(高仙芝、ホータン王女など)の壮絶な人物を描くことにより紐解いていく壮大な物語である。韓半島、日本、中国の振付家、俳優の出演を計画し、現在人選を進めている。
企画した康明姫さんは、東京・荒川生まれの在日2世。民族教育の中で9歳より民族楽器・洋琴を始め、数々の大会で優勝・入賞を重ねた。高校生からソヘグムを始め、卒業後は演奏家として活動。90年には、「在日文化に必要な伝統音楽を保持し、自身と仲間の活動の幅を広げたい」と、民族楽器重奏団「民楽(ミナク)」を設立した。
91年9月には民俗工房を在日有志と設立。コリア民族伝統音楽の普及と新人アーティストの育成に力を注ぎ、彼らの演奏活動への助成援助、各種演奏会の企画プロデュースなどを行っている。民族舞踊家の金英蘭、ソプラノ歌手の申桃月、洋琴演奏家の高淳姫、伽倻琴奏者の金オルさんが所属。ミナクの韓国・米国・ロシアナホトカ公演などを実現させてきた。
04年4月にはミナクのソリストと各ジャンルのスペシャリストとともにユニット「MINACK.C」をつくり、在日の民族音楽発展のため、様々な活動に取り組んでいる。
一方、ハン・コーポレーションは在日2世の韓至彦さんが1995年に設立した、イベントの企画制作・演出・運営などを行う会社である。
韓さんは大学で演劇と美術を学んだ後、日本の大手イベント会社に勤務していたが、韓国関係のイベントを担当したことをきっかけに、「在日の文化活動に役立つイベントを企画・推進すること、在日としての自分を表現してみたい」と独立。昨年は、東京・葛飾を発信地にコリア文化を紹介する企画「葛飾コリアンマンス」を行い、好評を博した。同企画にはミナクのメンバーも出演している。
在日の文化活動を模索する2人が新たな企画を考える中で出てきたのが、今回の音楽史劇である。康さんは、「民族楽器のルーツを探るとシルクロードにたどりついた。異なる国や民族の人と人、文化、ものがぶつかり合い交わっていく過程で、喜び、苦悩しながら生きた姿は、在日にも通じるものがある。それを描きたい」と話す。
韓さんは、「アジアの多様な文化に対する理解と共感を生み出し、新しい世代が”ともに生きる”未来に向けて、メッセージを投げかけたい」と強調した。
本企画の原作は、日韓合同授業研究会代表で新宿区立大久保小学校教諭の善元幸夫さん(56)が現在執筆中。原作を出版する計画もある。公演は2008年9月か10月、東京を予定。ソウル公演も模索したいとのことだ。問い合わせは03・3312・8244(ハン・コーポレーション)